両親が元気なうちに“実家じまい”したわたしは、両親が62歳のときに実家じまいをしました。もともと大分の実家には両親と祖母、わたしと3つ下の弟が住んでいました。しかし、わたしと弟はそれぞれ大学入学と同時に18歳で上京。以来、Uターンすることなく東京で暮らしています。そして、同居していた祖母も数年前に亡くなり、実家には両親2人だけで住んでいました。わたしが上京してから、ときどき両親は「いつか子どもたちのそばで暮らしたい」と話すことがありました。わたしも弟も東京で就職して、結婚してそれぞれの家庭を築いていて、地元に帰るつもりはないので、それを実現するには両親が上京するしかありません。両親がこれからどう生きていきたいのか、どう生きることが両親にとっての幸せなのか。親は私たちの将来のことを考えて支えてくれて、ここまで成長させてくれた。巣立ってからもいつも気にかけてくれた。だったら、次は私たちが、親のこと、実家のことを考えていくべきじゃないのか——。いろいろと考えた結果、両親の願いを叶えるために実家じまいをし、両親の上京をすすめることにしたのです。上京までの経緯やどのように実家じまいを進めたのかなど、一連のお話は一冊の本にまとめました。実家のことを考えるきっかけを届けたい本を出してから、各方面からさまざまな反響がありました。TVやメディアにも紹介されて、実家じまいについて考え始めたという声や実際に実家じまいを始めたという声もいただきました。そして、こういった反響をいただくたびに「わたしたち世代がもっと親の将来のこと、実家のことを一緒に考えるようになればいいのに」と思うようになったのです。少し前から「終活」という言葉が浸透してきて、終活に関する情報も増えました。しかし、終活は親が自分たちで人生の終わりに向けてすすめるものという印象が強い。子どもたちは後にのこされる立場で、さまざまなものを引き継ぐのも子どもたちなのに、親と一緒に将来のことに向き合わないというのはどうなんだろうと思ったのです。もちろん、わたしたち世代は、仕事も家庭もプライベートも忙しくて、自分たちのことで精いっぱい。だけど、親はいつまでも元気というわけではありません。気づかないうちに年老いていて、いざというときに「なんでもっと早く気づかなかったんだろう」「どうして元気なうちにちゃんと話しておかなかったんだろう」と後悔する。そんな人もたくさん見てきました。親の将来をどう考えていけばいいのか、実家のことをどうしていきたいのか。わたしたち子ども世代が、少しずつ考え始めるきっかけをお届けしたい。そう思って「実家のこと。」を立ち上げることにしました。親が元気なうちにわたしたち子ども世代が一緒に親や実家の将来を考える。そういう文化が当たり前になる一助になれたらいいなと思います。