サイン1 :親の身体が衰えてきた実家の片づけを考え始めるのに、わかりやすいタイミングのひとつが親の体調の変化に気づいたときです。人の身体は年齢とともにさまざまな老化現象が起こります。たとえば足腰の衰え。関節や神経に痛みを感じるようになるのはもちろん、長く歩けなくなったり、階段の上り下りがスムーズにできなくなったり。小さな段差につまずく、転びやすくなるのも不調の一種です。歩行や立つ・座るに影響が出てくると、外出や身の回りのこともこれまで同様にはいかなくなるかもしれず、片づけを提案するタイミングと言えます。親の身体には問題がなくても、物忘れが増えたり、理解力・判断力が衰えるなど、認知機能に低下が見られることもあるでしょう。身体の不調と違い、本人には自覚のないことも多いだけになかなか見えづらい変化ですが、家族であれば普段の会話や行動に違和感が感じられるはず。認知機能が低下すると、やはり身の回りのことをするのも不自由になることが想定されるので、片づけを考え始めてもいいかもしれません。とはいえ、心配をかけたくないという思いから、急激な体調の変化を子どもに伝えない親もいます。知らない間に深刻な事態になり、片づけのタイミングを見失わないためにも、できるだけ普段から通院状況や服用している薬などを把握しておくことが大切です。サイン2:物が増えた親自身に特別な変化はなくても、実家の様子が変わってきているなと感じたら、片づけを考え始めるタイミングかも。たとえば、以前と比べて「モノが増えた」と感じた経験はありませんか? テーブルの上が片づいていなかったり、収納スペースをはみ出してものが置かれていたり。廊下や床にもモノが積み上がっている状態になっていたら要注意。モノが捨てられなくなっているサインかもしれません。高齢になるにつれてモノを捨てられなくなるのには、さまざまな理由があります。体力や気力の低下、記憶力や認知力の低下はもちろん、単純にモノを捨てるのが面倒に感じたり、逆に捨てるのはもったいないと感じて溜め込んでしまう人もいます。また、子どもたちが成長して家を出たことで、寂しさから思い出の品などを捨てられなかったり、モノがたくさんある環境に安心感を感じていることから捨てる選択肢を持てない場合も考えられます。家にモノが増えていくと、たとえ必要なものでもどこにしまったかわからなくなってしまう可能性や、モノにつまずいて転倒してしまったりするリスクがあります。そればかりか火事の原因になったり、虫の発生や悪臭の原因になるなど衛生面でもとても心配。モノが増え始めたら、片づけを提案する良い機会と覚えましょう。サイン3:家の掃除が行き届かなくなってきたモノが増えていくのと同時に起こりがちなのが、掃除が行き届かなくなっていくという問題です。モノが増えるとそれだけ掃除がしにくくなりますし、置かれたものや隙間にホコリが積もったりして、あっという間に不衛生な環境を作り出します。また、たとえモノが増えていなくても、掃除の頻度が減ってきたなと感じたら、やはり体力や気力が落ちているか、認知力に変化があらわれてきた兆しかも。実家に帰ったら、さりげなく掃除状況をチェックしてみると変化に気づけるかもしれません。では具体的にはどこをチェックすればよいのでしょうか。まずはキッチンや洗面所、お風呂やトイレなどの水まわり。こまめに掃除しないとすぐに汚れてしまうため、掃除の頻度がわかります。続いて床。物が散乱していないか、ベタつきはないかなどをチェックしましょう。居住スペースに問題がなくても、普段使っていない部屋が不用品であふれていることもあります。また、冷蔵庫など食べ物類の処理忘れがあるかどうかも要チェックです。賞味期限の切れた食品を捨てずにとっておいたり、食べ残しが放置されていたりなどしたら少し気をつけて様子をみましょう。それ以外にも、庭が荒れていないか、出し忘れているゴミがないかもチェックを。外から見える部分は、本来なら家の中よりも見た目に気をつけるべきスペース。そこが気にならないようになっているということは、親自身に何らかの変化がある証拠かもしれません。特に、もともと親がきれい掃除が好きだったり、家を整えることに意識的だった場合はより気づきやすいもの。ささいな変化を見逃さないようにしましょう。サイン4:将来の不安を口にするようになってきた親の体も心も元気で、生活環境もある程度維持できている場合、片づけの緊急度は低いと言えます。しかし、会話の中で、実家の行く末を気にしたり、将来への不安を口にするようになってきたら、片づけを提案するチャンスかもしれません。ネガティブなことを話してくれるというのは、それだけ頼りにされている証拠と言えるでしょう。まずは、具体的にどんなことを不安に思っているのか、それに対してどうしたいと思っているのか、親に寄り添って話を聞いてあげることが大切です。場合によっては、片づけがそういった不安の解消に役立つことも。身の回りのモノを事前に整理しておけば万が一の時も安心ですし、目の前に片づけという目標ができると、かえって生活に張り合いが出る可能性もあります。サインが見えたら、まずは親と話し合おう前述のような実家の片づけサインが見えたら、どのように進めるのが適切か、まずは親とじっくり話し合ってみましょう。その際に一番大事にしてほしいのは、親の意見を尊重するということ。捨てたくないモノは無理に捨てなくてもかまいません。まずは、賞味期限切れの食品や何年も着ていない服、もらいもののタオルや食器など、明らかに不要と思われるモノから片づけ始めると、捨てることに対する心理的負担も少ないはずです。もし、自分たちで片づけるのが難しい場合は、業者に依頼するのも手。それ以外にも寄付やリサイクルなど、さまざまな選択肢を提示してあげると片づけに前向きになってくれるかもしれません。いずれにせよ、一気にきれいにしようとせず、親の意向を確認しながら行うのが穏便に進めるコツです。また、片づけと同時に、何かあったときのために貴重品や大事なものを共有しておくのもおすすめです。できれば実物を見せてもらい、記録に残しておくとより安心。ある程度把握できたら、リスト化して大切に保管しておきましょう。実家の片づけは親が元気なうちに早めにすすめよう離れて暮らす親を持つ方なら誰でも、実家の片づけはいずれ考えなければならないこと。親が身体を壊して入院してしまったりすると、必要かそうでないかの判断ができないばかりか、片づけを一気に背負うことにもなりかねません。実家の片づけはできるだけ早い方が、双方にとっても負担が少ないのは事実。次に帰省する際は、お伝えしたサインが出ていないかに着目し、くれぐれも見逃さないようにしてくださいね!文:渡部あきこ