実家じまい・実家片づけにかかる費用の相場実家じまいや実家の片づけにかかる費用は、以下の要素によって大きく異なります。一戸建て/マンション実家をどうするか(解体/売却/賃貸)不用品の量実家の立地や周辺の環境一例として、「木造一戸建てを解体または売却した場合」の一覧を見てみましょう。項目かかる費用相場支払いのタイミング片づけ片づけ・不用品回収代30万円程度回収作業完了時実家の解体解体費用1坪あたり40,000円~解体工事終了時実家の売却不動産仲介手数料売却した物件価格の3%+6万円+消費税売買契約時印紙税1,000円~60,000円売買契約書の作成時売却利益にかかる税金譲渡所得税所得税額(短期)=売却益 × 30.63%確定申告後各項目について詳しく見ていきましょう。片づけ費用・不用品回収費用片づけ・不用品処分の方法には大きく分けて2つあります。1.公共サービスを利用する(自治体に回収してもらう・自分たちで自治体のごみ処理場に持ち込む)2.民間業者を利用する公共サービスを利用民間業者を利用費用の目安粗大ゴミ回収 1つにつき400円~2,000円程度1日につき30万円前後~サービスの範囲回収の手配から不用品の分別、片づけ、運搬、家の清掃等すべて自分たちで行う片づけや分別、運搬、処分、清掃等がサービスに含まれる場合が多い(業者・サービス内容による)メリット格安でできる手間がかからないデメリット労力が大きく、作業に危険を伴う場合も割高おすすめの家庭できるだけ費用を安く抑えたい人数が少なく人手がない実家の状態や両親の意向、家族の都合から、メリット・デメリットを見極めて判断しましょう。業者に依頼する場合、費用は家の広さや間取り、立地、不用品の量などによって異なります。複数の見積もりをとり、適正な価格で依頼しましょう。実家の解体費用実家を解体する場合、専門の業者に依頼します。費用の目安は以下のとおりです。建物構造1坪あたりの費用木造40,000円鉄骨造60,000円鉄筋コンクリート造70,000円浄化槽50~80万円(1個あたり)(参考:NPO法人空家・空地管理センター「空き家の解体費用」)解体費用は建物の立地や規模、構造により異なります。また季節や時期によっても変動します。解体費用は頭の痛い問題ですが、多くの自治体で、空き家の解体費用に対して補助金を受けることができます。補助金の額や給付条件は自治体によって異なります。お住まいの自治体の窓口に問い合わせたり、インターネットで検索したりするとよいでしょう。こちらのサイトも参考になります。「地方公共団体による空き家対策支援制度」検索サイト不動産仲介手数料実家がまだ比較的新しい場合やリフォームしてある場合、人気のエリアに建っている場合などは、実家を解体するより人に売ったり貸したりする方がよいかもしれません。ちなみに、売却条件によっては損失が出る可能性があります。この場合、譲渡所得税は発生しません。一定の条件を満たせば損益通算および繰越控除ができます。いずれにしても、自分たちで借り手を探したり相手方と交渉したりするのはハードルが高いもの。売買や賃貸に際しては不動産業者に依頼するのが一般的です。その場合、不動産業者に支払う仲介手数料が発生します。建物を売却する際の不動産仲介手数料は以下のように定められています。取引物件価格仲介手数料の上限400万円超取引物件価格(税抜)×3%+6万円+消費税200万円超~400万円以下取引物件価格(税抜)×4%+2万円+消費税200万円以下取引物件価格(税抜)×5%+消費税(参考:大阪府「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(建設省告示)令和元年8月30日改正」)また、建物を貸す場合(賃貸物件の仲介手数料)は以下の通りです。仲介手数料の上限=家賃の1ヶ月分+消費税(参考:国土交通省「宅地建物取引業法」)譲渡所得税譲渡所得とは、一般的に、土地、建物、株式、ゴルフ会員権などの資産の譲渡によって生ずる所得をいいます。実家を売却した場合にも支払わなければなりません。譲渡所得の金額は、次のように計算します。収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用) - 特別控除額 = 課税譲渡所得金額(1) 収入金額譲渡所得の収入金額は、通常、土地や建物の譲渡の対価として買主から受け取る金銭の額です。なお譲渡代金のほかに、譲渡から年末までの期間に対応する固定資産税および都市計画税(未経過固定資産税等)に相当する額の支払を受けた場合には、その額は譲渡価額に算入されます。また、金銭の代わりに物や権利などを受け取った場合も、その物や権利などの時価が収入金額になります。よって、資産を譲り渡すことによって、その他経済的な利益を受けた場合は、その経済的な利益も収入金額に含まれます。(2) 特別控除額土地や建物を譲渡した場合の特別控除額は次のようになっています(特別控除は一定の要件を満たす場合に適用されます)。(イ) 収用等により土地建物を譲渡した場合 ・・・ 5,000万円(ロ) マイホーム(居住用財産)を譲渡した場合 ・・・ 3,000万円(被相続人の居住用財産(空き家)を譲渡した場合・・・ 3,000万円)(ハ) 特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合 ・・・ 2,000万円(ニ) 特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合 ・・・ 1,500万円(ホ) 平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡した場合・・・1,000万円(ヘ) 農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合 ・・・ 800万円(ト) 低未利用土地等を譲渡した場合 ・・・ 100万円(注1) (ホ)、(ト)以外の特別控除額は、長期譲渡所得、短期譲渡所得のいずれからも一定の順序で控除することができます。(ホ)、(ト)の特別控除額は、長期譲渡所得に限り控除することができます。(注2) 長期譲渡所得は、譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年を超える土地建物を、また、短期譲渡所得は譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年以下の土地建物をそれぞれ譲渡したことによる所得をいいます。(注3) 土地、建物の譲渡所得から差し引く特別控除額の最高限度額は、年間の譲渡所得全体を通じて5,000万円です。税額の計算方法(土地や建物を譲渡したとき)土地や建物の譲渡による所得は、他の所得、例えば給与所得などと合計せず、分離して計算する分離課税制度が採用されており、譲渡所得の税額は次のように計算します。(1) 長期譲渡所得課税長期譲渡所得金額×15%(2) 短期譲渡所得課税短期譲渡所得金額×30%(注) 平成25年から令和19年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1パーセントを所得税と併せて申告・納付することになります。(転載:国税庁「譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」)親の住居の手配親が元気なうちに実家じまいをする場合、親が次に住む場所を手配する必要があります。自分の住まいに親を呼び寄せる新たに物件を購入する高齢者施設に入所する賃貸物件を探し、借りる以上の選択肢がありますが、いずれにしてもある程度の費用がかかります。その他これまで見てきた他にも、実家じまいはいくつかの出費を伴います。抵当権抹消登記相続登記測量修繕交通費(実家が遠い場合)近所の方への手土産代など抵当権抹消登記は住宅ローン完済時に行う手続きです。したがって、実家に住宅ローンがなければ、この手続きは必要ありません。実家じまいをするにあたってローンの残りを完済する場合などに行います。金融機関から融資を受ける際に、不動産を担保に設定された「抵当権」を不動産登記簿から抹消する手続きを「抵当権抹消登記」と呼ぶのです。抵当権抹消登記はご自身でも行えます。1不動産につき1,000円の登録免許税を支払います。しかし手続きが煩雑なため、司法書士に依頼するのが一般的です。1万円〜数万円が相場です。事前に見積もりを取ってから、依頼するかどうかを決めましょう。(参考:法務局「住宅ローン等を完済した方へ(抵当権の登記の抹消手続のご案内)」)相続登記とは、元々物件を所有していた人が亡くなった場合に、土地または家屋を自分の名義に変更する手続きです。登録免許税と司法書士への報酬がかかりますが、両親が元気なうちの実家じまいであれば原則必要ありません。測量は物件を売却する場合に求められるケースが多く、売り主側の負担で行うのが一般的です。費用は30〜50万円が一般的ですが、土地の形状や隣接土地との関係によってはさらに高額になります。実家を解体せず売却または賃貸にする場合、修繕(リフォーム)を検討する方もいます。修繕費用は業者によって幅があります。中には不当に高額な費用を請求する業者もいますので、複数の見積もりをとりましょう。また、親の名義の物件を子どもの名義でリフォームした場合、贈与税の対象になってしまう場合があります。一連の作業は、一定期間にわたって行います。何度も実家へ通うため、交通費もある程度見積もっておかなければなりません。加えて、近所の方に挨拶する場合は手土産代がかかります。その他こまごまとした出費を覚悟しておきましょう。これでうんざりしない!実家じまいの流れ実家じまいは物事の順序や進め方が重要です。「実家じまいに長い年月がかかり、うんざり」「意思疎通がうまくいかず関係が悪くなってしまった」こうならないよう、実家じまいの流れを押さえておきましょう。家族での相談実家じまいをするにあたって最も大切なのは、家族や親族でよく話し合うことです。「親が亡くなってから実家を片づけるのはごめんだから、今のうちにさっさと実家じまいをしてしまいたい」と考えも聞かずに片づけを始めてしまっては、両親に悲しい思いをさせてしまうかもしれません。反対に「両親は実家を手放したくないに違いない」と思い込む必要もありません。もしかしたら両親は、「今の住まいに縛られず自由に生きたいけれど、子どもたちには帰る場所が必要」と考え、無理して実家を維持しているのかもしれません。本当は、やってみたいことや住んでみたい場所が他にあるのかもしれません。いずれにしても、「両親はきっとこう考えているはず」と決めつけるのではなく、ざっくばらんに、「本当はどう考えているの?」と聞いてみてはいかがでしょうか。とはいえ、何の前触れもなくいきなり問いただせば、両親が面食らってしまう恐れもあります。普段から今後のことを少しずつ話題にしてみたり、知人の例を挙げて「お母さんはどう思う?」と聞いてみたりして、話しやすい雰囲気を作っておくのもおすすめです。十分に話し合った上で「親が元気なうちに実家じまいを」という結論に達したら、家族で協力して次の段階へと進みましょう。業者への相談・処分方法の決定実家じまいを決定したら、手順を決めていきます。今ある実家はどうするのか次の住まいはどこにするのか不用品の処理方法はどうするか非常に多くの要素を元に決めなければならないため、短期間で結論を出すのは難しいでしょう。むしろ、片づけと並行して情報を集め、話し合いながら決めていくのがおすすめです。「すぐに決めなければ」と思うと、業者のセールストークに負けて高額な契約をしてしまったり、あとで後悔する決断をしてしまったりするかもしれないからです。片づけ実家じまいの関門の一つが片づけです。長年家族が住んでいた家の物量は多く、仕分けや処分に労力を伴うからです。片づけのコツは以下の2点です。「どれくらい残すか」「いつまでにやるか」を明確にする近所の人や友人に声をかける残すモノの量や期限というゴールを決めておけば、片づけが途中で止まらずスムーズに進みやすくなります。また、早いうちから知り合いに声をかけておけば、家具や家電だけでなく観葉植物など処分しづらいモノを引き取ってもらえるかもしれません。また、「必要なモノ」と「不要なモノ」に仕分けることが難しいモノは、「一時保管」とするのもおすすめです。一時保管にしたモノは見えないところに一定期間保管しておきます。期間が過ぎたあとに必要性を感じなかったら不要なモノとして処分するという流れにしておくと、片づけもはかどります。実家の売却・運用実家の売却を検討する場合、必ず専門家に査定を依頼し、査定金額を住み替えの予算として組み入れましょう。築年数だけでなく立地や周辺環境、リフォームの有無によって査定金額は変動します。素人の判断で見積もった売却価格は当てにならないのです。売却を依頼する契約の仕方には以下のパターンがあります。専属専任媒介契約(ひとつの不動産会社だけに仲介を依頼する)専任媒介契約(ひとつの不動産会社に依頼しつつ、自分が売却相手を見つけて契約も可能)一般媒介契約(複数の不動産会社に同時に仲介を依頼する)複数の査定をとり、自分たちにとって一番有利な金額を提示した不動産会社と専任媒介契約を結ぶ方法もよいですし、早く売却したいのであれば一般媒介契約で手広く買い手を探す方法もあります。いずれにしても、信頼できる不動産会社との出会いが重要であり、実家を賃貸物件にする場合も同じです。親の新たな住まいの検討・手配親が元気なうちに実家じまいをする場合、住み替え先の検討や手配も重要です。実家から新しい住まいにスムーズに移れるよう、タイミングに気をつけましょう。賃貸物件の場合、高齢者を敬遠するオーナーが少なくありません。物件探しに想定より時間がかかってしまい、住む場所がなくなってしまったということのないようにしたいものです。新たな住まいを購入する場合や高齢者施設に入所する場合も、実家の解体や売却とのタイミングを見極めて計画を立てましょう。売却の場合は早めに売りに出し、余裕をもって進めるのがおすすめです。実家じまいの費用を安くする方法5選何かと費用がかかる実家じまいですが、安く抑える方法はいくつかあります。ここでは以下の5つを解説します。早めに始める自分で片づける相見積もりをとる買取サービスを利用する目的に合わせた業者選びをするあなたのご家族に合った方法が見つかるかもしれません。ぜひ、参考にしてみてください。早めに始める実家じまいは「先手必勝」。早く始めるほど、費用も抑えられます。ポイントはできるときに少しずつ始めておくこと。帰省のタイミングで不用品の仕分けをしておいたり、捨てるモノと売るモノを分けておくだけでもその後の作業がぐっと楽になります。スケジュールに余裕があれば、家財道具を知り合いに譲ったりインターネットを利用して無料で引き取ってもらったりできるでしょう。専門業者に依頼する場合も、業者の選定にじっくりと腰を据えて取り組めます。遅く始めてしまい取り組める期間が短いと、業者の予約ができずに割高なところに頼まざるを得ないなども……。とくに、不用品回収や片づけはシーズンによってかなり価格が変動します。余裕をもって安い時期に依頼できるようにしましょう。悲しいことですが、親は高齢になるほど体力や判断力、記憶力が少しずつ低下していきます。片づけがおっくうになったり、手続きの進め方の判断がつかなくなったりすれば、それだけサポートが必要になり、費用もかさみます。できるだけ早く着手できるとよいですね。自分で片づける業者に頼めば割高になります。一方自分や家族ならば人件費はかかりません。思い出の品やじっくり整理したいモノを中心に、自分たちで片づけるのもおすすめです。思い出に浸って必要以上に時間がかかってしまうかもしれません。「何月何日までに終わらせる」とスケジュールを決めておくとよいでしょう。家財道具を片づける過程で掘り出し物が見つかり、思わぬ高値で売れる可能性もあります。「何もかも自分たちでやらなければ」と考えると大変ですが、できる範囲で取り組むだけでも、十分お金の節約になりますよ。相見積もりをとる業者に依頼する場合、法外な価格を請求されないためにも、相見積もりは鉄則です。ただし、価格だけで判断するのは危険です。相場と比べて安すぎる業者の場合は何らかの問題があると考えられます。相見積もりをとる場合は、見た目の価格だけではなくサービスの範囲や口コミもチェックしましょう。業者の雰囲気は、問い合わせた際の対応にも表れます。「質問にきちんと答えてくれるか」「問い合わせに対する返答はスピーディーか」を見ておくとよいですね。買取サービスを利用する自分たちにとっては不要な物も、お金を払ってでも手に入れたい人がいるかもしれません。不用品は捨てるだけでなく、買い取り依頼も検討しましょう。訪問査定の業者や、段ボールに詰めて送るだけで買い取ってくれる業者も増えています。メルカリやYahoo!オークションを利用するのもよいでしょう。買取希望の品が多い場合には、買取サービスのある片づけ業者を選ぶのもひとつの手です。目的に合わせた業者選びをする実家じまいに関わるサービスを提供する業者はたくさんあります。片づけの場合、実家がキレイな状態なのに特殊清掃を売りにした業者に依頼すれば、不要なサービスに料金を支払う羽目になってしまいます。逆に、予想より不用品の量が多く追加料金を支払う場合も割高です。目的に合わせた業者を選べば、費用の節約につながると心得ておきましょう。以下のサービスが必要かを意識すると業者選びがスムーズです。生ゴミや危険物の処理ハウスクリーニングの程度個人情報を含む書類の量と処分方法立会の有無各種手続きを行う場合も、司法書士などの専門家に依頼すれば手間がかからず確実です。しかし費用を抑えたいのであれば、自分たちでできないか調べてみるとよいでしょう。親が元気なうちに実家じまいの相談をして、費用を抑えよう実家じまいにはさまざまな場面で費用がかかり、実家の環境やその後のライフスタイルによって金額には幅があります。親が元気なうちに相談し、早めに準備を始めれば、費用を安く抑える上でも効果的です。情報を集めながら、家族みんなが納得でき、費用も節約できる実家じまいができるとよいですね。文:中村 藍出典:内閣府「令和5年版高齢社会白書(全体版)」