実家の親の面倒は子が見るべきかひと昔前は「親の面倒は長男が見るべき」という世間の流れがありましたが、実際は長男だけに義務があるわけではありません。子ども全員に、平等に親の面倒を見る義務が発生します。きょうだいがいる場合は、両親の意見だけでなく、きょうだいの意見も尊重する必要があります。同居している子どもだけに負担がかかることや、遠方の子どもだけが不安を抱えることは避けたいですね。「実家の親の面倒」というと、身の回りのお世話や金銭的サポートが挙げられます。それだけでなく、定期的に会いに行ってコミュニケーションを取ったり、病気やケガなどの体調面での不安をサポートしたりすることも「親の面倒」と言えるでしょう。元気であっても金銭面に余裕がなく、生活面でのサポートが必要な場合もあります。また、介護が必要になったとき、親と離れて暮らしている場合は、お世話や日常生活に疲れたときには家事代行を利用をしたり、ホームヘルパーさんにお世話を任せたりするなど無理のない生活環境をつくることも欠かせません。実家の親の面倒をみるために知っておきたいこと親と事前に話し合うべきこと親にはできるだけ健康で長生きをしてほしいものですが、いつ状況が変化するかわかりません。親の希望を聞いたり、サポートできる体制を作ったりする時間が必要です。親が元気だからこそ、ぜひ今のうちに話し合っておいてください。ただ、親が元気なうちは、どんな話し合いが必要なのか想像がしにくいものです。漠然と「将来」についてといっても、親自身も深く考えられていない場合もあるかもしれません。具体的に親とどんなことを話し合うべきなのか、いくつか挙げてみましょう。お金のことまずは親の貯蓄や収入について知っておく必要があります。改めてお金のことを考え、現状を知っておくことで、親も子も将来に備えることができます。両親が、いくつの銀行口座を持っているか知っていますか?本人も作ったことすら忘れている口座もあるかもしれません。株式・投資信託や不動産など預金以外の金融資産を所持している場合もあります。また、借入金などのマイナスの財産についても相続の対象になるため、知っておく必要があります。すべての口座の預金額や、資産状況を把握しておきましょう。次に、現在の親の収入についても確認しておく必要があります。。現在働いている場合は、何歳まで働く予定なのかを聞いておきましょう。本人に働く意思があっても、働く場所や体力があるのかも重要です。あわせて毎月の年金受給額(受給予定額)の確認をしておきましょう。介護のこと介護が必要になった場合、「誰に介護をしてほしいのか」希望を聞いておくことも大切です。親の意見だけでなく子ども側も、介護したい意思があるのか、現実的に介護できる環境が作れるのかなどの意見を伝えなければいけません。在宅介護と施設での介護、どちらが良いのか在宅介護と施設での介護はどちらが良いというものではありません。本人や家族の希望を尊重し、どちらの選択肢も持っておいたほうが良いでしょう。在宅介護の場合在宅介護のメリットは、住み慣れた家で生活ができ、家族との時間が長くなることです。施設に入居するよりも費用を抑えられるのもポイントです。施設での新しい環境に不安な方は、自宅介護を望むかもしれません。ただし、在宅での介護となると家族の負担が増えることがデメリットと言えるでしょう。仕事や日常生活に加えて、日々の介護を行うとなると、精神的にも体力的にも疲弊してしまう方もいます。実家から離れて暮らしている場合は遠距離介護になるため、帰省のたびに交通費がかかるだけでなく、介護サービスの利用などで金銭的に負担がかかったり、帰省のために仕事を休む場面が多くなったりというデメリットもあります。家族で役割を分担したり、介護サービスを利用したり、お互いに無理のない介護生活が望ましいですね。施設での介護の場合施設に入居した場合は、緊急時には夜間でも対応してくれるので、安心できることが一番のメリットです。施設内でリハビリなどもできるため、通院の必要がなく本人の負担も少ないでしょう。認知症の方は徘徊の心配もあるため、24時間体制の施設のほうが安心できます。施設での介護のデメリットは、費用が高額なことが挙げられます。入居時にも大きな費用がかかるので、ある程度老後の資金に余裕が必要です。また、感染症の心配などで、家族が自由に訪問できない場合もあり、施設での孤立を心配する方もいるでしょう。施設での集団生活に不安を抱えていたり、施設に入るために地元を離れることに抵抗があったり、慣れない環境での生活にストレスがかかることもあります。住まいのこと「住み慣れた家で暮らしたい」という思いを持つ親もいれば、「施設に入ったほうが安心できる」「子どもや孫の近くにいたい」など、親の意見も各家庭で異なります。そのまま実家で暮らす場合には、高齢になっても暮らしやすい環境にリフォームが必要な場合もあります。家庭内での事故や転倒などを防ぐためにも対策を万全にしておきましょう。もし、実家を処分するのであれば、何年以内に実現させるのが望ましいのか、税金や相続についてはどうしたら良いのかなど、具体的に話し合う内容が浮き彫りになります。施設に入る場合でも、場所や費用についてなどを知っておかなければいけません。まずは、実家の親が将来どこで暮らしたいかを話し合い、さらに内容を深めていけるといざというときに安心です。健康のこと実家の親が、どんな病院に通っているのか知っていますか?大病を患わない限り、日常的に親の体調について聞くことは少ないかもしれません。持病はあるのか、定期的に通院している病院はあるのか、薬は飲んでいるのかなど、継続する必要があるものについては把握しておくほうが良いでしょう。また、終末期の延命治療を希望するのかどうかも聞いておいたほうが良いです。もちろん、この先意見が変わることがあるかもしれません。そのときは都度本人の意思を尊重できるように準備をすることが大切です。実家が遠方の場合はどうすべきかまずは近所の人、兄弟や親戚に相談実家が遠方の場合、何かあったときにすぐ駆けつけられないことが、一番の難点です。両親の様子を見に行ってもらえる近所の人や兄弟、親戚はいますか?実家の親のご近所付き合いや交友関係など、遠方にいては気付けない親の知人がいるかもしれません。何かあったときは様子を見に行ってもらえるよう、日頃から近所の人や親族とコミュニケーションをとり、連絡がつく状態にしておくと良いでしょう。近くに相談できる人がいない場合ケアマネージャーさんなどに相談し、緊急時にどう対応すべきかをあらかじめ決めておきましょう。訪問看護を任せられる人を見つけたり、見守りシステムを導入したり、家電製品などが一定期間使用されない場合に通知されるICT機器を利用したり、遠方にいても緊急時の対策は可能です。実家の親の面倒を見るためには「元気なうちに話し合うこと」から始めよう介護することだけが「親の面倒を見る」ということではありません。実家の親が将来どんな暮らしを望んでいるのか、どこで誰と暮らしたいと思っているのか、離れているからこそ知っておくべきことがたくさんあります。将来を少しでも安心して生活もらえるように今から準備することも大切ですが、気軽に将来について話し合える関係性を築くことはもっと大切です。離れて暮らしていても、実家にいる親とのコミュニケーションを頻繁に取り、お互いの将来をより良いものにしていきましょう。