実家の整理を早めに進めるべき理由実家の整理を早めに進めるべきなのは、親が元気なうちに私物や家財を整理することで、万が一、親が亡くなった時に片づけに着手しやすいといったメリットがあるためです。逆にいえば、実家の整理は、遺品整理になるととても難しくなります。遺品整理が難しいのは、物がいる・いらないの判断を率先してつけてくれる人がいないためです。物がいる・いらないの判断をする人がいない遺品は、残された家族であっても整理が難しいとされています。こうした背景があるため、実家の整理は、親が元気なうちに進めるとよいでしょう。実家の整理を進めるタイミングとは?実家の整理を進めるタイミングは、主に以下の2つに分けられます。生前整理遺品整理生前整理と遺品整理はいずれもタイミングに決まりがありません。それでも、整理に取り掛かるタイミングが遅くなると、相続に影響が及ぶ場合もあるため、早期に取り組むのが賢明です。生前整理生前整理とは、親が存命のうちに身辺や財産の整理をすることです。亡くなる準備など世間的に暗いイメージがあるものの、親が生まれてからこれまでの人生を振り返り、人生を前向きに捉えられるメリットがあります。生前整理で大切なのは、親の物をすぐに捨てようとしないことです。むしろ、生前整理では、親が何を大事にしているのか、何を残しているのか、その判断基準を共有することが重要だとされます。遺品整理遺品整理は、生前使用されていた生活用品や思い出の品など、残された遺品を整理することです。遺品整理の時期には、特に決まりはありませんが、葬儀が終わったタイミングがスムーズに取りかかれるといわれています。遺品整理は基本的に遺言書やエンディングノートの内容に従って行われますが、そういったものが用意されていないことも多く、また、ものを残すかどうかを判断する人もいないため、遺品整理は生前整理と比べて進めにくい傾向があります。そのため、遺品整理でも重要なのは、生前に親とコミュニケーションをとっておくことです。生前に物にまつわる思い出を可能な限り聞いておくと、遺品整理を円滑に進められるでしょう。実家を整理するメリット実家を整理するメリットは、次の4つです。転倒事故の発生を予防できる在宅介護の負担を軽減できる緊急時の場合でも必要な物が見つけ出しやすくなる家の財産を把握しやすくなる実家を整理するメリットを知っておくと、整理に対する気持ちも前向きになります。ぜひ参考にしてください。転倒事故を予防できる実家の整理を進めて部屋がスッキリすると、転倒事故の発生を予防できます。実際、独立行政法人国民生活センターの報告によれば、高齢者の住宅内事故の原因として転落に次いで多いのが転倒です。転倒は住宅内事故全体の約2割を占めています。転倒が一番起こる場所は物が比較的少ない階段となっていますが、転倒を防ぐうえでは、居室や廊下といった生活スペースの安全性を保つことも重要です。これらの生活スペースが片づいていれば、親の転倒を未然に防げるでしょう。在宅介護の負担を軽減できる実家の整理を進めておくと、在宅介護の負担を軽減できます。在宅介護は子どもや配偶者のほかに、プロのヘルパーが介助にあたります。プロのヘルパーが介助に当たる際に、物が散らかっているとスムーズな介助が妨げられてしまうでしょう。また、在宅介護では、手すりや歩行器、自動排せつ処理装置といった、さまざまな介護用品が必要です。これらの介護用品を設置できるスペースを事前に確保しておかなければなりません。緊急時の場合でも必要な物が見つけ出しやすくなる実家の整理を進めておくと、緊急時の場合でも必要な物が見つけ出しやすくなります。ここでいう必要な物とは、通帳や印鑑といった貴重品や、保険証やお薬手帳などです。これらのものの保管場所を把握しておくと、親が急に倒れてしまったり、緊急で入院したりする場合に早急に対応できます。家にある財産を把握しやすくなる実家の整理を進めておくと、家の財産を把握しやすくなります。家にある財産とは、現金や通帳、ジュエリー、自家用車など、お金に換金できる物です。もちろん、別荘や投資用マンションといった不動産も、財産に当たります。親の判断力があるうちに、家にある財産を明確にし家族と情報を共有しておくことで、相続トラブルの発生を防げるでしょう。ただし、親は、これらの財産について、正確に把握していないケースが多々あります。財産の保管場所を把握するうえでは、直接的に聞くよりも、相談の形式が効果的です。例えば「うちでは、通帳をタンスの引き出しに入れているけど、大丈夫かな?お父さんはどうしているの?」と聞いてみるのもひとつの手です。このようなコミュニケーションをとるうちに、親が忘れていた財産を思い出してくれるでしょう。実家の整理をうまく進める方法実家の整理、とりわけ生前整理をうまく進める方法は、次の4つです。事前に親戚やきょうだいに話しておく自分の荷物がある場合はそれらから片づける貴重品や財産は早めに1つにまとめる必要がない物は早めに処分する実家の整理は、事前の準備と計画が重要です。以下の4つの方法を参考に進めてみてください。事前に親戚やきょうだいに話しておく実家の整理を進めるうえでは、事前に親戚やきょうだいに話しておきましょう。実家の整理は、関係者が多いだけに、独断で進めるとのちのちトラブルの原因にもなりかねないためです。できれば、親戚やきょうだいに実家の整理の実施について話すだけでなく、関係者全員で下見をすることをおすすめします。関係者全員で下見し、それぞれの意向を聞き取っておくことで、特に形見分けでのトラブル発生を防げるでしょう。自分の荷物がある場合はそれらから片づける幼い頃の学習机や学生服、教科書など、自分の荷物がある場合は、それらから片づけましょう。自分の荷物は、どう扱うかの判断基準を自分自身が持っているため、物のいる・いらないの区別がしやすいです。自分の物を減らすのも、なかなか大変ですが、親の片づけに対するやる気を促すためにも取り組むとよいでしょう。貴重品や財産は早めに1つにまとめる実家の整理を進める際に、貴重品や財産は早めに1つにまとめましょう。財産には、貴金属・高級時計といった現物資産のほかに、現金や通帳、生命保険の証書、不動産の権利書などの金融資産が該当します。意外と盲点なのが、貸金庫の存在です。貸金庫がある場合は、中身とともに必ず確認しておきましょう。貴重品には、印鑑やパスポート、運転免許証、年金手帳、健康保険証などがあります。厳密には貴重品ではありませんが、公共料金の領収書も取っておきましょう。公共料金の領収書を取っておくと、解約時の手続きがスムーズになるほか、メインバンク以外の預金や財産の特定につながる場合があります。必要ない物は早めに処分する実家の整理を進めるうえでは、必要ない物は早めに処分しましょう。必要のない物とは、長年使われた形跡のない食器・調理器具や未使用の家財、壊れてしまった電化製品などです。これらの物はためらうことなくどんどん捨てていきましょう。生前整理は親の物をすぐに捨てないことが重要とはいえ、実家の物の量は想像を絶します。物を捨てておかないと、遺品整理で苦労してしまう可能性が高いでしょう。また、親が安心安全に暮らせる状況にするうえでは、生前整理の段階で、物を減らしておくことが重要です。こうした事情があるだけに、実家の整理では、9割の物は捨てる心構えを持ち、片づけに臨むとよいでしょう。親が元気なうちに実家の整理をすすめよう実家の整理は、親と離れて暮らす人にとって避けては通れない問題のひとつです。一方で、実家にある物の多さや価値観の異なる親とコミュニケーションを取る大変さから、実家を整理することに二の足を踏んでいる方も多いかと思います。それでも、親の体力や判断能力があるうちに実家の整理を少しでも進めておくことが大切です。地道な生前整理によって、相続や遺品整理の負担が減るだけでなく、親が安全に暮らせる環境をつくることができます。本記事を参考に、実家の整理を進めてみてください。文:Omura Wataru