生前整理アドバイザーと整理収納アドバイザーの違い——整理収納アドバイザーと生前整理アドバイザーに違いはありますか?どちらも「片づけ」に関わる資格ですが、目的が大きく異なります。整理収納アドバイザーはハウスキーピング協会が認定する資格です。整理収納の理論を学び、1級資格を取得すると、お客様の家の片づけをしたり、整理収納の講座やセミナーを開催したりすることができます。一方で、生前整理アドバイザーは、生前整理普及協会が認定する資格で、自分の人生を振り返り、今後の人生をどう生きるかを考え、そのために必要なモノ・心・情報の整理をサポートします。片づけの現場に行くこともありますが、講座やセミナーで生前整理の考え方を伝えることが多いですね。——情報の整理はどんなことを整理するんですか?情報の整理とは、自分に関することを整理することです。具体的には、財産、葬儀、お墓、医療、介護の希望など「自分はどうしたいか」を考えながら整理していきます。モノの整理だけでなく、心の整理ができていることが大切です。生前整理アドバイザーができること——生前整理アドバイザーの資格を取ると具体的にどんなことができますか?生前整理アドバイザーができることは2つあります。1つ目は、生前整理の講座やセミナーの開催です。セミナーでは、生前整理の基本的な知識をお伝えするだけでなく、エンディングノートを実際に書いてもらうワークショップや、写真整理の大切さを知ってもらうためのイベントなどもおこなっています。特に写真の整理は心の整理につながるので、とても大切だと思っています。2つ目は片づけの現場に直接赴くことです。ご依頼いただく方の中には、遺品整理を兼ねて生前整理を希望される方もいらっしゃいます。たくさんの思い出のモノと向き合うことはご本人にとって非常に辛い作業です。お客様の気持ちに寄り添いながら、片づけを進めたり、写真整理をしたりしています。モノの片づけはもちろん大事ですが、どちらかというと心と情報の整理を大切にしていますね。——講座やセミナーを受講するのは、どんな人が多いですか?生前整理の講座を受講するのは、「そろそろ親のことを考えたい」「実家のことで悩んでいる」という人が多いですね。オンライン講座では、やはり実家のことで悩む40〜50代の人が多いなと思います。自治体からの依頼で対面式の講座を開催する際は、年配の方も多く参加されます。ほかには遺品整理やリユース業に従事されている方の受講も多いですね。実家の片づけを依頼されたときに気をつけていること——実家の片づけを依頼されたときや生前整理のセミナーでは、どんなことに気をつけていますか?とにかく依頼者の話を聞くことを大切にしています。「捨てる」という言葉は使わず、むやみに片づけようとしないように心がけています。お客様や受講生が高齢であればあるほど、世代間の価値観の違いを感じます。モノのない時代に育った親に育てられた人が多いので、「モノがあってこそ豊かだ」という考え方が根強いんですね。その考え方をしっかり受け入れてあげることが大切です。——そうすると、なかなか片づけが進まないのではないでしょうか……?ある意味、仕方がない部分もあります。片づけるように説得するのではなく、納得してもらうことのほうが重要ですから。納得しないうちに片づけてモノをどんどんなくしてしまうと、自分を否定された気持ちになってしまんですよ。それが、うつ病を引き起こし、認知症に発展する危険性もあるんです。また、無理やり片づけると、あとから「あのとき言い含められたから」という後悔の念を抱かせてしまうことにもなります。それは絶対に避けなければなりません。ですから、「自分の人生でもう使うことはないんだな」と納得しながら片づけを進めてもらうようにしています。できれば実家は親子で片づけてほしい——親子で実家の片づけを行う際に、特に注意すべき点はありますか?実家の片づけを親子でおこなう場合は、親に無理強いをしないこと、とにかく話を聞いてあげることを大切にしてほしいです。高齢者にとって大事なのは「安全」と「清潔」。この2点を優先的に確保できるように片づけてほしいですね。——実家の片づけは業者に依頼する方法もありますが、やはり親子で片づけたほうがいいんでしょうか?そうですね。離れて暮らしていて難しい場合もあるかもしれませんが、できれば親子で片づけてもらいたいですね。話を聞いてあげること自体が親にとっての生前整理(心の整理)につながり、その話を聞く子ども自身の生前整理につながっていきます。だから親も子も元気なうちに片づけをやってほしいんです。歳を重ねると気力も体力もどんどん失ってしまうので。とはいえ、モノを片づける前にまずは「片づけをすることはとても大事なことなんだよ」ということを説得するのではなくて、納得してもらいながら親子で片づけを進めていくことが大事なんじゃないかなと思っています。【筆者後記】親の話を聞いて、想いを受け止めてあげることが大事だというKさん。モノの片づけだけではなく、心と情報の整理までするのが生前整理なのだという話は、整理収納アドバイザーの私にとっては目からうろこでした。「説得するのではなく納得してもらう」ことは、実家の片づけにおいて重要なポイントではないでしょうか。第12回は、引き続きKさんのインタビューをお届けします。生前整理アドバイザーであるKさんに「実際にご自身の実家を片づけた話」をお聞きしました。次回もお楽しみに。