父の遺品整理をしたことをきっかけに実家の片づけも再開――前回は、実家の片づけを少しずつ進めていった矢先に、お父様の介護が大変になってあまり片づけが進まなくなってしまったというお話でしたよね。その後、お父様が亡くなってからの遺品整理や片づけはどうやって進められたのですか?私は母の気持ちの整理も考え、ゆっくりと遺品整理を進めるつもりでした。ところが、母がどんどん処分しようとするので、逆に私のほうが戸惑ってしまったんです。ただ、これはたまたま母がそうだっただけで、片づけのスピードは人それぞれだと思います。私が全面的に手伝ったことも大きかったかもしれません。母一人で片づけるのは大変ですからね。――具体的にはどんなモノを片づけましたか?父が使っていた椅子やタンスなどの大きな家具と衣類を処分しました。古いタンスは、母と2人で解体して、少しずつ処分していきました。遺品整理をしていくうちに、母の気持ちがスッキリしていった気がします。実は、私が使っていたライティングデスクもまだ実家にあったんですが、ボロボロなので処分しました。遺品整理とあわせて、一時中断していた実家の片づけも進められるようになりました。――遺品整理のなかで手放しがたいと感じたモノはありますか?やはり父の思い出のモノや頑張ってきた証となるモノですね。父は、武道をやっていたので、賞状やトロフィーがたくさんあったんですよ。それらをすべて取り出し、母と一緒に眺めながら「すごいね、本当に頑張っていたよね」と思い出話に花を咲かせました。すると、気持ちの整理がついたのか、母はすぐに処分しようとしたんです。でも、私が慌てて「ちょっと待って!」と制止しました。「これは父が生きてきた証だからせめて写真に残しておかない?」と母に提案したんです。勢いに乗ってそのまま捨ててしまったら、母が後悔しそうな気がしたからです。母も「そうね」と納得して、一つひとつ写真を撮ってから手放しました。私自身も何らかの形で残しておきたいという思いがあったので写真を残せてよかったと思います。このような感じで、ほかの遺品整理も進めていきました。スムーズに進んだのは、母の気持ちに寄り添って、母が納得いく形にできたからだと思います。――前編では、孫や兄弟を巻き込んで片づけを進めていったと話していましたよね。そのなかで家族の協力があって助かったことはありますか?実家は築年数がだいぶ経っていて、古くて傷んでいるところがありました。なので、補修や修理をしたいなと思っていたんですね。そしたら、内装の仕事をしている私の弟が「床を直したいんだけど、片づけないと修繕ができないんだよね」と母に言ってくれたんです。おかげで床の片づけができました。親が片づけに気乗りしないときは「修理しないと危ない。けれども片づけないと業者を呼べないから、一緒に片づけない?」という切り出し方をしてみるのもいいんじゃないでしょうか。親も納得しやすいと思います。――実家の片づけはいつ頃終わりそうですか?まだ先になりそうです。いつ終わるかは分かりません。実家はまだまだ片づけないといけない場所がありますから。これからも母の様子を見ながら、ゆっくり片づけていこうと思っています。ただ、父の介護が始まってから安全に配慮して実家を整えたのはよかったですね。おかげで母が安心して暮らせているので。モノだけでなくあらゆるコトもコンパクトに――実家の片づけや遺品整理を進めるなかで、お父様が亡くなる前にやっておいてよかったと実感したことはありますか?情報の整理ですね。例えば預金通帳などをだんだんとコンパクトにして、減らしていったのが本当によかったと思います。母が私を頼るようになってくれたので、家の財産状況や大事なモノを隠さずに教えてくれるようになりました。そのおかげで相続のときに専門家を呼ぶ必要がなく、母と私で済ませることができて楽でした。あとから遺言書が出てきたり、大事な書類が出てきたりといったことがないように、情報の整理をしておくのはすごく大事なことなんだなと実感しました。遺言書のあるなしで、提出する書類の数も違うので、父が遺言書を残してくれたのはありがたかったです。母子、姉弟でもめることもなくスムーズに相続が終わり、父の思うとおりの相続ができて満足してくれたんじゃないかと思います。もうひとつは、遺影写真です。遺言書と一緒に父が用意してくれていました。今の父から見ると若すぎたので、家族と話し合って実際の葬儀では使わなかったんですけどね……。でも、その写真は母のお気に入りで、父が元気なときを思い出せるからと家に飾ってあります。母は、遺影写真を残すことは大切だと感じたようで、自分のときのための遺影写真を準備してくれています。――実家の片づけは、モノの整理だけすればいいわけではないんですね。その通りです。前編でもお話ししたように、生前整理は「モノ・心・情報」の3つを整理することです。そのため、単にモノを片づけるだけでなく、心と情報の整理も欠かせません。心はモノと情報を整理しながら、家族とコミュニケーションをとることで整っていきます。どうしても皆さんが意外と見落とされがちなのが情報の整理です。最近ではエンディングノートを配布している自治体もあるので、ぜひ情報整理に活用してほしいと思います。実家の片づけと遺品整理をしてみて、親に限らず自分自身もとにかく少しずつモノとコトをコンパクトにしていくことがすごく大事だなと実感しました。第14回は、引き続きKさんにうかがった「生前整理アドバイザーに聞いたアルバム整理のコツ」についてお伝えします。