終活に積極的に取り組む親が少ない理由――積極的に終活に取り組もうとしている親はまだまだ少ないように思いますが、岩﨑さんはどう考えていますか。終活が広まりにくい大きな理由のひとつは、「親から子どもへの一方的な思いやり」になってしまっていることだと思います。エンディングノートや遺言書にしても、自分の想いを壁に向かって話しかけるようなもので、すごく孤独な作業ですよね。――たしかに。あと、死に向かうような作業はどうしても敬遠されがちですよね。あと、終活が「未来を考えること」ではなくて、「何を残すか」という一方的なイメージが強いことも影響しているかもしれません。ただある調査では、60〜70代では終活に積極的に取り組む人が割と増えているそうです。つまり、未来を考える余地がある人が終活をしているのではないかと。彼らは自分のためだけでなく、残される家族のためにお金の整理をしているんですよね。一方で、80歳以上の人は終活の必要性を感じていないケースが多いのかもしれません。そういった人たちに終活を啓蒙できていないと考えがちですが、実は世代間の価値観の違いもありそうなんですよね。――それはどういうことなんですか。いろいろな人に話を聞いて分かったのですが、80代くらいの人たちは、自分が親を亡くしたときに困った経験が少ないらしいんです。というのも、彼らが若い頃は核家族化が進んでおらず、親と同居していたり、親戚が近くに住んでいたりと、助け合える環境がありました。それに、不動産などの名義は基本的に父親が管理していたし、親の人間関係も把握しやすかった。そのため「終活の必要がない」と考える人が多いですし、「自分が亡くなった後は何とかしてくれ」というスタンスの人も少なくないのかもしれません。逆に、60〜70代の人たちは、80〜90代の親を亡くした後に困った経験がある人が多いんですよね。だからこそ、自分の子どもたちに迷惑をかけたくないと考え、終活に積極的に取り組んでいるのではないでしょうか。親と話すのが難しいテーマをどう切り出すか――親が元気なうちに終活について話しておきたいものの「子どもから話題を切り出しにくい」という人も多いですよね。子どもが親にこうした話を切り出すのが難しいと感じるのは、とてもよく分かります。その背景には、「親に何かあったときのことばかり考えていると思われるのではないか」「遺産目当てに見られるのではないか」といった不安があるのだと思います。――岩﨑さんは、ご自身の親御さんとこうした話をすることはありますか。そうですね。でも、膝を突き合わせて終活について話すのではなく、日常会話の中で少しずつ話しています。例えば、僕は母の料理が好きで、実家に帰るたびに「この料理の作り方を教えて」と聞くことが多かったんです。すると先日、母がレシピを1冊にまとめて僕にくれました。家族で『探偵ナイトスクープ』を観ながら「母さんが亡くなったら『母の味を再現して』って番組に依頼するかもね」と話していたことも影響しているのかもしれません。また、母は「介護施設には入りたくない」「延命治療は不要」といった考えを日常会話の中で話してくれるので、ある程度将来の希望を理解できていると感じています。父とは、父が購入したマンションについて話すこともありました。親が家を買ったときの話には、ドラマがありますよね。どんな気持ちでその家を買ったのか、どんな暮らしを思い描いていたのか。そうした話を聞きつつ、「俺たちは住むつもりはないけど、このマンションをどうしていきたいの?」とさりげなく自分の意見を伝えながら、一緒に将来について考えていくことが大切だと思います。――やはり、子どもが親とコミュニケーションをとりながら、少しずつ終活のことを考えていけるといいですね。そう思います。終活は「何を残すか」ではなく、「未来をどうするか」を話すこと。だからこそ、親の資産や持ち物をどうするかを決めるのではなく、親の気持ちを聞くことが大切なのかなと思いますね。ちなみに弊社では、家族で協力して終活に取り組めるサービス「OurPlan」の展開を視野に入れています。家族で一緒に前向きに終活に取り組み、どんな未来にしていきたいのかを考えることは、万が一のときのために家族が備えるだけでなく、よりよく生きることにもつながっていくと思いますね。前編では、岩﨑さんに「おくやみなび」開発の背景や想いを、そして後編では親と終活の話をするコツをお聞きしました。岩﨑さんが語るように、終活は「親が亡くなった後の準備」ではなく、「家族がよりよく生きるための時間」なのかもしれません。親が元気なうちに未来について話し合うことは、家族の絆を強めるきっかけにもなるはず。ちょっとした日常の会話からでも、一歩ずつ。そんなきっかけになれば嬉しいです。取材協力:株式会社 OurPlan「おくやみなび」のほか、身元保証が必要な高齢者や家族、支援者が信頼できる身元保証事業者を無料で検索・比較し、自分に合った保証サービスを見つけられるWebプラットフォーム「身元保証のけんさく」も運営。