アルバム整理は心の整理につながる――Kさんも経験があると思いますが、整理収納アドバイザーとして片づけの現場に行くと、アルバム写真がよく出てきますよね。はい。特に長年住んでいる古い実家の片づけの現場で、片づけられないモノとしてよく出てくるのが写真のアルバムですね。アルバムが山のように出てくるんですが、あんなに分厚いものを整理したいと思ってもどうしようもないじゃないですか。モノの片づけの場合、思い出のモノの片づけは順番的に最後になりますが、生前整理は心の整理につながるので、アルバム整理を早めにすることをおすすめしています。――アルバム整理が心の整理につながった経験があるのでしょうか。そうなんです。父が元気なときに、父のアルバムが出てきて家族で一緒にアルバム整理をする機会がありました。そのなかの1枚に、父が学生時代に角帽を被った写真があったんです。それを父が見たとき、当時の背景をパッと思い出したんでしょうね。ポロポロと涙をこぼしながら自分が歩んできた人生を話してくれたんです。父の涙を見たのは、そのときが初めてでした。私が知らなかった父の人生を垣間見ることができて、よかったと思いました。もっともっと写真を見ながら父の話を聞いておけばよかったなという後悔がないわけではありません。でも、父も私も心の整理につながったと思っています。そして、父のアルバム整理をしてよかったことがもうひとつあって。それは、父の葬儀のときに、元気な頃の父の写真を集めて飾れたことです。親族で写真を眺めながら、父を偲ぶことができました。あらためてアルバム整理をやってよかったと思いましたし、父もそう思ってくれたんじゃないかなと感じています。ただ、実家にはアルバム写真がまだたくさん残っているので、これからも整理を続けていかなければなりません。残したい写真を厳選するには、もう少し時間がかかりそうですね。――実家のアルバム整理をするときは、親のストーリーを聞くことが大切なんですね。そのとおりです!アルバム写真を捨てるための整理ではなくて、話を聞いて「心の整理」をしてもらうための整理なんです。アルバム整理は時間をかけても問題ありません。けれども、親が認知症になったり、亡くなったりしてからでは話を聞けなくなってしまいます。なので、早めにアルバムを見ながら話を聞くことだけはやっておいてほしいなと思います。アルバム整理によって親の心の整理をすることは、親の未来のことも考えてあげることにもつながります。実家の片づけというと悪いイメージを抱きがちですが、後ろ向きなことではなく、とても前向きな行動だととらえてほしいですね。思い出のモノを撮影してデータとして残す――ただ、古いアルバムの場合、ぴったりくっついて剥がせない写真もあると思うのですが、どのように整理したらいいんですか?ドライヤーでゆっくり剥がす方法もありますが、大切な写真を無理やり剥がしてビリビリにしてしまったら困るので、私の場合は剥がさずにそのままスマホで撮影したり、スキャナーを利用してデータとして保存しています。アルバムとして残すとかさばりますが、デジタルで残せば保管するスペースは必要ありませんから。とはいえ、本当に大切な写真は厳選して、あえて紙で残す方法をとることもあります。小さいアルバムに張り替えれば、保管するスペースを減らせますし、すぐに見返せるというメリットがありますからね。――アルバムのような思い出のモノはデータとして残す形が最善策なのでしょうか?もちろんモノとして残したいモノもありますよね。先ほどもお話ししたように小さなアルバムにするといった方法もあるので、それはそれでいいと思います。でも、やっぱりスペースをとるので暮らしにくくなってしまいますよね。データとして残した写真を見返すという形で納得できるならば、撮影してデータとして残すほうがいいんじゃないでしょうか。あるお客様のおうちにうかがったとき、親が残しておいた子どものおもちゃや描いた絵が出てきたことがあるんです。しかもボロボロの産着から布オムツまで出てきたんですよ。それを見た瞬間、娘さんが号泣していました。自分が親に大事にされていたことに気づいたんでしょうね。そのとき「これらは使わないけれども手放せない」という話になったんです。だけど、実家のモノをすべてなくして引っ越すことになっていたので、全部は持っていけなくて……。最終的には親が残してくれた娘さんの思い出のモノを一つひとつ撮影して、データにしてお渡ししました。お客様自身でやると時間も労力もかかって、どうしても後回しになってしまいます。それを私たち生前整理アドバイザーがお手伝いすれば、アルバム整理が早く終わります。お客様にはとても感謝されましたよ。アルバムに限らず、こうやってデータ化することでモノ自体を手放す方法があることも知っておいてほしいですね。【筆者後記】整理収納アドバイザーの感覚だと、片づけをスムーズに進めるためにどうしても思い出のモノは後回しでいいと考えてしまいます。ですが、実家の片づけの場合、実家のアルバム整理を早めにおこなうことで、親子ともに心の整理ができるという話がとても印象的でした。アルバム写真もモノもそのまま保管しても劣化していくだけなので、実家の片づけで悩んでいる人にはデータ化してとっておくことをおすすめしたいですね。4回にわたってお送りしたKさんへのインタビューは今回が最終回です。Kさん、ありがとうございました!第15回は、実際に実家じまいをした整理収納アドバイザーの方にお話をうかがいます。次回もお楽しみに!