終活は「知っている」けれど、始められない理由「終活」という言葉は、いまやシニア層に広く知られています。コスモヘルス株式会社が2025年に実施した調査では、シニアの約9割が「終活という言葉を知っている」と回答しました。しかし、「すでに終活を始めている」と答えた人は全体の2割ほど。半数以上の人が「そのうち始めたい」と思ってはいるものの、“そのとき”はなかなか訪れないようです。そして、もうひとつ見逃せないのが、“終活=親だけのもの”として捉えられている現実です。終活は、親がひとりで取り組むには心理的にも実務的にも負担が大きく、結果的に「何から手をつければよいかわからない」「相談できる人がいない」といった理由で進まないケースも多く見受けられます。子どもが関わることで、終活はもっと進めやすくなる終活の内容として最も重視されているのは「遺品整理」(66.0%)と「財産の整理」(44.2%)。どちらも、親が亡くなったあとに子どもが関わることになる事柄です。にもかかわらず、親子でそれらについて話し合う機会が十分に持たれていないことは、大きなギャップだといえます。実際、終活を始められない理由としては、「何から手をつければよいかわからない」が最多(55.0%)。これは、“親が一人で抱え込んでいる”状況が生み出す不安とも考えられます。さらに「相談できる人がいない」(14.9%)という回答もあるように、終活をめぐるコミュニケーション不足が障壁となっていることがうかがえます。「一緒に進める終活」は、親子双方にとっての安心になるこの調査結果を見て改めて感じるのは、終活は“親のため”だけのものではないということです。終活が親だけの一方通行になってしまうと、いざというときに遺された子どもが戸惑い、混乱することにもなりかねません。エンディングノートの作成や、財産の整理、希望する医療や介護についてなど、親の意志を子どもが把握しておくことは、将来の安心にも直結します。親が元気なうちだからこそ、できることがあります。話せるうちに話す。迷っているなら、子どもから声をかけてみる。そんな小さな一歩が、親にとっても子どもにとっても、大きな意味を持つのではないでしょうか。「終活」のはじめ方は、もっと自由でいい終活に対する心理的なハードルの背景には、「考えるのが面倒」「費用が不安」といった理由もあるようです。ですが、すべてを一気に片づける必要はありません。そもそも“終活”という言葉の響きが、どこか構えてしまうものなのかもしれません。「遺言を書かなきゃ」「不動産を整理しなきゃ」と身構えてしまうと、かえって手が止まってしまいます。でも実際には、もっと日常的な、軽やかな入り口から始めてもいいのです。たとえば、写真アルバムを一緒に見ながら「これは誰?」「これ懐かしいね」と会話をする。冷蔵庫の奥にしまわれていた書類や小物を整理しながら「これ、どうする?」と気軽に話し合う。「最近、エンディングノートっていうのがあるらしいよ」と雑談をきっかけにするのも十分なスタートです。また、親にとっては「子どもに心配をかけたくない」「まだ元気だから大丈夫」と思っていることも多いもの。でも、子どもの側から「もしものとき、困らないように教えておいてもらえると助かるよ」と伝えれば、親も安心して話し始められるかもしれません。終活は“人生の終わり”の準備であると同時に、“今をどう生きるか”を考えるための時間でもあります。だからこそ、形式や順番にとらわれず、「できることから」「気になったときに」「親子で少しずつ」という始め方があっていい。何をするかよりも、“誰と、どんな気持ちで取り組むか”。それこそが、終活を進めるうえで最も大切な視点なのかもしれません。※出典:「【シニア終活調査】終活を始めたシニアは少数派。最大の壁は『最初の一歩』であることが明らかに!」(コスモヘルス株式会社調べ)