「実家の片づけ」の重要性を理解してくれない世代親世代はなぜ、実家の片づけを積極的にやってくれないのでしょうか。それはこれまで生きてきた時代の違いも大きく影響しているといいます。たとえば、祖父母世代(親世代の親)は現在ほど平均寿命は長くはありませんでした。親世代の兄弟も多いため、祖父母が亡くなっても遺品整理や実家の片づけは兄弟で分担して行えました。そのため「どうにかなるはず」と思ってしまい、実家の片づけの重要性や大変さを理解してもらえず、なかなか進まない場合があるようです。本書でも、親子の価値観の違いについて触れられています。 「物を大切にするというより、そもそも物を捨てるという発想すらありません。大事な物、高価な物ほど使わずに大切にしまう=とっておくという判断をすることがほとんどです。(中略)一方、今はいかにして少ない物で豊かに暮らすかというという「ミニマリズム」の考え方が広く知られ、おしゃれで環境に優しい生き方として受け入れられるようになりました」(『実家の片づけ 親とモメない「話し方」』20ページより ※原文まま)と親子で真逆の価値観を持っていることが語られています。では、どのように実家の片づけを進めていけばいいのでしょうか。著者の渡部 亜矢さんは、実家の片づけの本質は「物を介して親とコミュニケーションをとること」(『実家の片づけ 親とモメない「話し方」』40ページより)と語ります。著者は本書で、親世代と子ども世代が、同じ物を見ながら話をすることを「物コミュニケーション」と表現し、くり返しその大切さややり方を教えてくれています。片づけをしていると「懐かしい」「これはね、○○さんからもらってね」と、つい思い出がよみがえります。たとえ子どもから見たらガラクタに見えても、親にとっては大切な物である場合もあります。「こんな汚いの、さっさとゴミ箱に捨てて」などと言わずに、親子で物について話をすることが大事なのだそうです。会話をしていくうちに、物に対しての気持ちが変化して手放せるようになります。逆に「(使わないけれど)やはり捨てられない」と思えば、一時保管に切り替えればいいのです。ちなみに「一時保管」とは、「いる」「いらない」では分類できなかった物を入れる場所です。普段使わない場所で保管することがポイントです。目の前から見えなくなることで、その物の存在を忘れて捨てやすくなるメリットがあります。この手法は、片づけが上手にできない子どもや自分自身にも活用できます。親とコミュニケーションをとる際に気をつけるポイント本書には親とのコミュニケーションの際に、気をつけたいNGワードと共に、言い換え例も掲載されています。 × 片づけてあげてるのに。○ ここをきれいにしたら、スッキリしたね(結果だけいう)。(『実家の片づけ 親とモメない「話し方」』79ページより)「親子だから」という理由で、遠慮せずつい強い口調で語りがちな人もいるでしょう。特に実家が離れたご家庭の場合「わざわざ帰省して、やってあげてるのに」と思ってしまいがちです。そのような気持ちのまま片づけを手伝っていると、言葉の端々にトゲが生まれてしまいます。自分の気持ちを言うのではなく、結果や事実だけを伝えることが大切。本書に記載されている考え方や言い換えフレーズ例などは、片づけをしてくれない子どもやパートナーに対しても応用できる内容も多々ありましたよ。片づけがうまくいく、エリア別の順番片づけをする際、目立つ場所から手をつけがちです。それではうまくいかないケースが多いでしょう。それよりも親が納得して片づけやすい場所や、思い入れがあまりない物から片づけていくと成功しやすくなるといいます。順番は以下となります。 1. 命に直結する防災動線2. よく使う居間、台所や寝室などの生活空間3. 趣味・思い出の品・重要品・紙モノ(『実家の片づけ 親とモメない「話し方」』143ページより)まずは「命」が大事。停電したときに安全にトイレに行きやすいよう「生活動線上の床に物を置かないようにする」などと優先順位を決めて片づけをするのは、明確で納得感があります。「命を守るために、その場所にこの物は必要か、否か」という目線は、ひとつの指標になるでしょう。この場面で使える「NGワードの言い換え例」も載っているので、親に伝える際に参考にしてください。例えば以下のようなフレーズが掲載されています。 × 夜中に何度もトイレに行くのに、こんな物があったら転ぶでしょ。○ 停電になってもトイレに行けるように、これは移動させて一時保管にしておこう。(『実家の片づけ 親とモメない「話し方」』146ページより)床にビニールや段ボールが転がっていたら「危ないでしょう、転倒したらどうするの」と言いたくなります。そこは感情的にならずに伝えることで、互いに嫌な気持ちにならずに済みます。家族の絆を深める、実家の片づけ本物コミュニケーションをすると、家族で物や思い出に対して「どう感じているのか共有する時間」が生まれます。それは「物とのお別れの会」となり、「捨てる」への踏ん切りがつきやすくなります。そうやって物に対して話した時間も、かけがえのない思い出になるでしょう。 また物を間に挟むことで共通の話題が生まれます。親と話をするとケンカをしがちな人や、会話の内容に困る人でも話がしやすくなるはずです。 このように本書には「まだ家じまいは早い」と思っている人にも、読んでほしい内容が掲載されています。きっと、片づけに課題を感じている人たちにとって、繰り返し読みたくなる本になるはずです。 特に言い換えフレーズの目線がとてもやさしいので、実践することで家族の絆もさらに深まるでしょう。文:夏野久万出典:青春出版社「実家の片づけ 親とモメない『話し方』」渡部亜矢著(2024年8月19日発売)