再建築不可物件ゆえに売れない……「正直、安くてもいい、誰か買ってくれれば!」という気持ちであれば、買い手はつくもの。高殿さんも最初は不動産屋に依頼し、実家が売れる寸前まで話は進みました。しかし、ここで発覚したのが、実家が再建築不可物件だった、ということ。物件というのは接道義務を果たしていないとならないのですが、高殿さんの実家はその義務を果たしていなかったのです。「どうも道路の拡張工事をしたかった市が、お隣のA家の道路側の土地を譲ってもらうかかわりに、松本さんの家の前の道路を交換したみたいです。ですので、厳密に言うと松本さんの家の前の道は道路ではなく、Aさんの私有地です」(『私の実家が売れません!』48ページより)両隣は家が建ち、目の前の道路はお隣さんの私有地。つまり、家が公道とは接していません。そうなると、買い手も手を引き、不動産屋も諦め顔になります。こうして、家の売却は暗礁に乗り上げます。実家がゴミ屋敷問題見た目にはそうでもなくても、実家の中はガラクタだらけ……そんなご家庭は多いのではないでしょうか。高殿さんの実家も例にもれず、足の踏み場もない状況。売れないならば貸せばいいじゃない、と考えた高殿さんでしたが、家の中のモノ……いや、ゴミを片付けなければ話は始まりません。最初は業者に頼もうとした高殿さんですが、これにも莫大なお金がかかります。ゴミを捨てるのにも、お金はかかるのです。実のところ、このレビューを書いている筆者も実家じまいをしたばかりですが、捨てるだけなのに驚くほどにお金がかかります。市に回収してもらうのにもお金がかかります。考えて見れば、普段から粗大ごみを捨てるのにもお金がかかるわけですが、マメに捨てていれば正直あまり気になりません。が、まとめて、捨てるとなると……?幸い、時代はレトロブーム。モノによっては売れる場合があります。高殿さんはガレージセールの開催を写真と共にネットで告知。全部タダ、ということもあって人が集まってくるのです。捨てる神あれば拾う神あり、ということでしょうか。さらに、そういったものをごっそりと買い取る業者(せどらー)も現れ、ついでにそこに不用な家電などを回収してもらうことに。昔の家電には、今は貴重な金属が含まれている場合も。頭脳とテクノロジーと家族の動員でどうにか「ゴミ屋敷」を「ボロ空き家」に変えた高殿さん。しかし、個人的にはこれはかなりラッキーでは、とも思います。モノの状態がよかったから、というのは大きいかもしれません。例えば、たばこをスパスパと吸う人であれば、ヤニ焼けもあります。するとガクンと価値が下がることに。なかなか昔の人はモノを捨てたがりません。そうなれば、せめて暇があればモノ自体を綺麗にしておく、というのは大事なようです。それもなかなか難しいところではありますが……。実家はジモティーで売る不動産屋で売れないならどうするのか。高殿さんが選んだ手段とは「地元の掲示板ジモティー」でした。実はこういったボロ空き家に投資する人は意外といるのです。自分たちでDIYして使ったり、スタートアップのプロジェクトの一環に使ったり、世の中にはいろんな活用法があります。もちろん、高殿さんは自分の家を売る際に関係する法律などもしっかりと調べ、空き家周りのムーブメントもリサーチ。その上での行動でした。結果、高殿さんは50万円で売りに出し、見事に売却に成功します。ただ、ここで注目したいのが、築75年、古いとは言え、丁寧に使用していたこと、しっかりと作られていたこと、というポイントもありました。もし、床や屋根が抜け落ちたりしていたならば、状況は変わっていたかもしれません。また、「これで売れるならもう少し金額を上げてもいいかも?」と値段を吊り上げなかったのもよかったのではないでしょうか。とは言え、売れると思っていたものが売れなくなったり、ゴミ屋敷の片付けに疲弊したり……ということを経験していれば、なんでもいいからとにかく早く売りたいと思うのが人の心というものかもしれません。本の内容としては、高殿さんの体験がエッセイとして綴られていますが、不動産周りの知識や法律についてもしっかりと解説がついています。何より、高殿さんのノリの良さが文章ににじみ出ているのも読みやすいポイント。高殿さんの体験をそのままなぞらう、というのは難しいかもしれませんが、実家じまいの際の選択肢のひとつに加えられることは間違いないはずです。文:ふくだりょうこ出典:エクスナレッジ「私の実家が売れません!」高殿 円著(2024年7月20日発売)