子ども世代が発見する「必要のない契約書」——高齢者の方が直面する法的トラブルで、特に多いのはどういったものでしょうか?高齢者ご本人からの相談というより、お子さんたちが「実家でこんな契約書を見つけたんだけど、これはおかしいのでは?」と相談に来られるケースが圧倒的に多いですね。一人暮らしの親御さんのお宅で、必要のない工事の契約や高額なリース契約書が見つかるパターンです。消費者被害の典型例としては、屋根リフォームやソーラーパネル設置の営業、必要のない商品の購入契約などがあります。契約の多くは消費者契約法で解決できます。ただ、「この人には必要のない契約」というケースが実に多いんですよね。 ——知らない間に高齢の親が契約してしまっているケースが多そうですね……。そうした契約を発見した場合、どう対処すればよいのでしょうか?まずお金を支払ったかどうかが重要な分かれ目です。契約していても支払い前であれば、最悪の場合は無視することもできる。しかし、一度お金を払ってしまうと取り返すのは非常に困難になります。悪質でない業者であれば、解除の連絡をすれば対応してくれることが多いです。しかし、本当に悪質な業者の場合、連絡がとれないなどお金の回収は困難で、弁護士費用の方が高くついてしまうのが現実です。だからこそ、支払う前の相談が重要なんです。加入している保険に“弁護士特約”がついているか確認 ——とはいえ「弁護士に相談するのはハードルが高い」と感じる人も多いと思うのですが。そうですよね。ただ、最近は「弁護士特約」がかなり普及していて、自動車保険や火災保険に付帯していることもあります。対象範囲は同居の親族だけでなく、別居の未婚の子まで含まれるものもあります。——弁護士特約とは……?弁護士特約とは、法的トラブルが発生した際の弁護士費用を保険会社が負担してくれる特約です。もともとは交通事故での費用倒れを防ぐために作られましたが、最近では日常生活のトラブル全般に対応できるものも増えています。自動車保険だけでなく、火災保険にも付いているものもあり、同居の親族、別居の未婚の子まで範囲に含まれるものもあります。弁護士特約があれば、弁護士費用を気にせずに相談できます。なので、勝ち目の薄いケースであっても泣き寝入りせずに、弁護士に相談して法的解決を図ることが可能です。以前、エアコンの水漏れトラブルで業者と交渉するために弁護士特約を使った依頼者もいらっしゃいましたよ。もし、弁護士に相談しないといけないようなトラブルが発生したら、まずは加入している保険を確認してみることをおすすめします。——たしかに、まず保険を確認した方がよさそうですね。トラブルに巻き込まれたときに弁護士に相談するメリットは、どういった点にあるのでしょうか?法的な側面を把握しておくことで、全体的な予測が立てられることです。感情的な部分と法的な部分の両方を理解した上で、話し合いの基準を持てますからね。「法律的には最終的にこうなる」という見通しがあると、気持ちの面でも冷静に判断できるようになります。早めの対策とコミュニケーションが鍵——トラブルを未然に防ぐために、どのような点を心がけるべきでしょうか?何より大切なのは、日頃から家族間のコミュニケーションを密にしておくことです。高齢者はいくらでもトラブルに巻き込まれる可能性がある。家が古くなる、思わぬところでケガをする、変な契約をしてしまう——そうしたリスクを早期発見するためにも、定期的な連絡が重要です。また、遺言書は早めに準備しておくことをおすすめします。70代でも「まだ早い」と思われがちですが、交通事故などで突然亡くなる可能性もある。80代後半になると認知機能の問題が出てくるため、意思がはっきりしているうちに準備しておくべきです。——最後に、読者の方にメッセージをお願いします。「困りそうな段階」で相談に来ていただくのが一番効果的です。すでに大きなトラブルになってからでは選択肢が限られてしまう。また、弁護士の専門外であれば、適切な専門家(税理士、司法書士など)をご紹介することもできます。家族の問題は法律以上にコミュニケーションが重要。結局は「会って話す」ことでうまくいくケースが多いんです。親が元気なうちに、面と向かって話し合う機会を意識的に作ることが、何よりの予防策になると思います。高齢者の法的トラブルは「発見の遅れ」が最大のリスク。定期的な連絡と早めの相談、そして弁護士特約の活用によって、多くのトラブルは予防・最小化できます。そして何より大切なのは、家族間の信頼関係を普段から築いておくこと。やはり密にコミュニケーションをとり、お互いの状況をある程度知っておくことが何よりも予防策になると改めて思いました。取材協力:弁護士法人 ENISHI