両親がエンディングノートを書きたがらない理由私自身、両親が亡くなった時に一番困るのは、モノよりも情報だと強く感じています。両親は自分たちが分かっていれば大丈夫と思っていたようでした。ですが、認知症や病気になるかどうかは予測できません。まだ元気な今だからこそ情報整理が必要だと感じたので、エンディングノートを書くことを両親に提案してみました。「自治体でエンディングノートを配布しているから、2冊もらってきてね」と話したところ、「その必要はない」と言われました。実はすでにエンディングノートをそれぞれ持っていたんです。両親は10年以上前から葬儀会社の互助会に加入していて、その時にエンディングノートをもらっていました。けれどもずっと放置したままで、ノートは真っ白。「持っているなら、書いておいてくれる?」とお願いしたら「そんなの面倒くさいし、歳を取って字を書くのが大変だから無理」と言われてしまいました。これまで4度も喪主として葬儀をしてきて大変な思いをしているはずなのに、自分たちにできたのだから子どももできるだろうと思っている様子。ここで諦めたら、両親が亡くなった時に苦労するのは私です。そこで帰省したタイミングで「それなら聞き取りするから私がエンディングノートに書き込んでもいいかな?」と提案しました。それならばOKということで、両親にエンディングノートに記載されている質問項目について、一つひとつ回答してもらいました。正直、両親がエンディングノートを書くのを渋るのは、自分が亡くなったときのことを話すのは嫌だからなのかなと思っていたんです。ところが実際は、単純に「面倒くさい」という理由でした。私の両親の場合、モノの整理も情報の整理も「もう歳を取ってしまって面倒くさい」に尽きることがよく分かりました。私が命令口調で「やっておいて」と言ったところで、実家の片づけは一つたりとも進まないのが明白です。こういう親を持った場合は、一緒に進めていくしかありません。私自身が近い将来に苦労しないためには、早めに実家の片づけをしたほうがいいと改めて感じました。エンディングノートを通して知った親の人生エンディングノートは、親の交友関係や生い立ちまで記入する項目があります。親の子ども時代の話は母からは聞いたことがありましたが、父から聞いたのは初めてです。父が照れながらも正直に話してくれたのは予想外のことでした。父が、何を、誰を大切にしているのかを知る貴重な機会となりました。父にとっても私にとっても気持ちの面での「生前整理」ができたのではないかと思っています。親が自らエンディングノートを書いてくれるようなタイプではないのなら、聞き取りながら一緒に書くことをおすすめします。エンディングノートは、親の思いを知るためのツールとしても非常にいいと感じました。防災ボトルにも健康情報を記載介護の資格を持っている整理収納アドバイザー仲間に教えてもらったのが防災ボトルの存在です。既往歴や服用している薬などの健康に関する情報を記入してボトルに入れ、冷蔵庫に保管するというもの。各自治体で配布しています。実家とは新幹線で1時間半の距離で、災害があった時はすぐに駆けつけることができません。両親のどちらかが災害や病気などでレスキューが必要な時に、防災ボトルが冷蔵庫に入っていれば、救急隊員にすぐに情報を提供できるというのが防災ボトルのメリットです。さっそく両親にこの存在を伝えると、母がすぐに受け取りに行ってきてくれました。私が帰省したタイミングで記入を促すと、頑固な父は「個人情報を他人に晒すなんて」という理由で拒否しました。言い出したら聞かないので、父のことは諦めています。一方、母は「自分に何かあった時に、お父さんに任せられるとは思えない」ということで、すんなりと記入して冷蔵庫に保管してくれています。母については、遠距離でも少し安心できる材料が一つ増えました。エンディングノートを親子の対話を深めるツールにエンディングノートは両親とのコミュニケーションツールとしても使えます。親と踏み込んだ話をするのは、なかなか切り出しにくいものです。そんなときにエンディングノートや防災ボトルがあれば、話し合うきっかけがつくれるでしょう。すでに作成済みの場合でも、数年後には状況が変わるかもしれないので、その都度アップデートは必要です。「エンディングノートを見直してみない?」と声をかけてみるのもいいかもしれませんね。こんなふうに親とのコミュニケーションを取るきっかけとして、ぜひエンディングノートを活用してみてください。第21回は、義実家の片づけで苦戦した方にインタビューしたので、その経験談をお伝えします。