義父の体調不良をきっかけに、義実家の片づけが動き出す――Oさんの住まいは東京で、義実家は関西ですが、もともと義実家との関係は良かったんですか?ものすごく仲が良いわけではありませんが、険悪な関係でもありません。物理的に距離があるので、あまり義実家に家族で帰省すること自体少なかったですし。特にコロナ禍以降、私はほとんど義実家を訪ねていません。義母は元気ではあるのですが、気分の浮き沈みがある人です。帰省の話を伝えても「体調が悪いから来なくていい」と言ってくることが多く、そのたびに「それなら行きません」と答えていました。義母は言い出したら聞かないタイプなので、波風が立たないように「はい、はい」と答えておいたほうがラクなんですよ。でも、その“ラクさ”が積もり積もって、今の状況を招いてしまったのかもしれません。――義実家を片づけたほうがいいと考えるようになったきっかけは?義実家は、3DKのマンション住まいで、それぞれ義父の部屋、義母の部屋、納戸として使っていました。ところが2024年に義父が足を悪くして、買い物にも行けなくなってしまったんです。ある日、骨折して動けなくなり、夫が市の支援サービスの手続きをするために久しぶりに帰省しました。そうして東京の自宅に戻った夫が「家の中がすごいことになっていた。それに耐えられない臭いだった」と言うんです。モノがいっぱいで、どこから手をつけていいのかわからない状態だと。夫が片づけようとしたら「触らないで」と義母に言われたらしく、何もできないまま帰ってきたんです。義両親には片づける気はまったくなく、捨てる意識はゼロでした。このままでは安全に暮らせないのではないかと、どうにか片づけられないか夫婦で考えるようになりました。片づけのプロである藤野さんにも何度か相談させていただいたのは、そういう経緯があります。%3Csmall%3E%E2%80%BB%E5%86%99%E7%9C%9F%E3%81%AF%E3%82%A4%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%81%A7%E3%81%99%3C%2Fsmall%3E義母の拒否と、介護ヘルパーさんの支援――その後、ご主人やOさん自身は義実家の片づけに行きましたか?私が片づけに行っても言うことを聞いてくれないと思ったので、夫に頼みました。けれども、義母が片づけをさせてくれず、行くたびにケンカになって戻ってくることの繰り返し。結局、私も夫も何もできないまま時間だけが過ぎていきました。そうこうしているうちに、あまりの散らかりように見るに見かねた介護ヘルパーさんが「このままでは危ない」と判断して、生活動線で大切なリビングダイニングだけ少しずつ片づけてくれたんです。私たちが説得しても拒否するだけだったのに、不思議ですよね。「この部屋では介助ができないから、ちょっと片づけますね」──その一言には、義母も反論できなかったようです。身内では届かなかった言葉が、専門職の立場からだと伝わる。不思議ですが、それが現実でした。おかげでリビングダイニングの生活動線はなんとか確保できました。――身内よりも第三者に片づけてもらうほうがよかったわけですね。はい。藤野さんに「孫を使って片づけてみては?」というアドバイスをもらって、息子を義実家に行かせたことがあるんですが、義母はかたくなに部屋に入れてくれませんでした。息子にも「絶対に”捨てる”って言わないように」と念押ししたのですが、少しでも片づくように働きかけたのに、義母は頑として聞いてくれませんでした。可愛いがっている孫の言葉でも何も響かなかったんですよ。ここまで頑固だと、身内が片づけるのは諦めるしかないなと思いました。その後は、介護ヘルパーさんから介護記録とともに「ここを片づけました」という報告を受けています。ヘルパーさんの存在が本当にありがたいですね。義父の急逝で片づけに転機が訪れた――その後、片づけはどのように進めていったんですか。そんななかで、義父が外出先で転倒し、腕を骨折したことをきっかけに体調を崩しました。呼吸状態が悪化し、そのままあっけなく急逝してしまったんです。家族で慌てて関西に向かって葬儀を済ませ、義母をフォローしながら義実家のことを話し合いました。リビングダイニングは介護ヘルパーさんが片づけてくれていたので、義父が使っていた部屋をどうするのかが問題です。夫も私も仕事があるので、実家の片づけのために長期お休みすることはできません。最終的に義父の部屋を業者に依頼して片づけてもらうことにしました。義母も業者が自分の部屋を片づけるわけではないので、特に反対することはなかったですね。介護ベッドやタンスの撤去などを含む、部屋の片づけ費用は10万円くらいかかりました。義父の部屋はモノがなくなり、キレイになって風通しもよくなったので、そこに仏壇を置きました。いまだに義母の部屋はまったく手をつけられていませんが、家全体に漂っていた悪臭はなくなりました。モノが多すぎると掃除もできないじゃないですか。部屋がスッキリして片づいたことで、義母がある程度清潔に暮らせるようになってよかったです。義母が転倒するリスクも減りました。義実家の片づけを“あきらめる”という選択もあるOさんは義実家とは「戦わない」ことをモットーにしています。「義母に片づけを促してもケンカになるだけ。だったら争わないほうがいい。片づけは、その人の人生に関わることだから、無理に変えようとしてはいけないと思うようになりました」と言います。義母が亡くなったあとは、義父のときのように業者に頼む予定なのだそうです。下手に口出しして関係を悪化させるよりも、波風を立てないために見守る。距離的な問題や義実家との関係を考えると、片づけを進めることをあきらめるという選択肢もあるのかもしれませんね。第22回は引き続き義実家の片づけについて、Oさんの90歳の義母との買い溜め攻防戦をお伝えします。