家の広さが半分になると、モノは想像以上に残せなかった——住み替えの物件が決まり、いよいよ実家の片づけが始まったわけですね。片づけはスムーズに進みましたか?正直、かなり大変でした。150平米の二世帯住宅から70平米のマンションに引っ越すので、家の広さは半分になりますから。両親は、どちらもモノを散らかすタイプではありません。床にモノも置いていなかったですし、割とスッキリとしている家でした。だから私も「3分の1くらい減らせば大丈夫」と高を括っていたんです。減らしたのは、洋服や部屋着、食器・グラス類など。写真アルバムは何十冊もありましたが、デジタル化はせずにお気に入りの写真を厳選して新居に持っていきました。あとは、祖母のモノが二世帯住宅に多少残っていたので、両親と父の姉2人とで分けています。祖母の着物はすべて売却する形で手放しました。祖母の洋服は、母が似合うものだけ残しておくことにしたんですが、それを新居に持っていったことで祖母も一緒に引っ越せた気がしています。ここまでは大変ではありましたが、予定通りに進んでいました。でも、実際に引っ越して暮らし始めてみると、モノが多くて……。150平米の家は、自分たちが思っていた以上にたくさんモノが収納できていたんですね。結局、引っ越し後も整理をしていかなければなりませんでした。洋服や食器をさらに減らして、最終的に実家にあったモノは半分以下になりましたね。——二世帯住宅で使っていた家具類は、そのまま新居に持っていったのですか?家具はサイズ的に新居には入らないものが多くて、ほぼ買い替えました。例えば、大きなダイニングテーブルと椅子4脚、サイドボード、食洗機など。これらは引っ越す際に、ご近所の方々に譲ることができたので助かりました。仏壇はコンパクトなものに買い替えています。また、本家だからと残していた来客用の食器類は処分しました。両親は、新しい暮らしに向けて家具を選ぶのが楽しかったようです。そのせいか、家具を手放すことに抵抗はなかったですね。——モノを減らしていくうえで、大変だったことはありますか?体力よりも感情面でしょうか。引っ越し前にモノをすべて出して、両親に要不要を判断してもらっていました。洋服は、季節や用途別に一緒に仕分け。食器やグラスも、代用できるものがあれば処分、気に入っているものだけ残すといったように両親と話し合って厳選していたんです。こうやって一緒に決めたはずなのに、引っ越し先で「服がない」「あれ捨てたでしょ?」と冗談まじりに何度か言われました。私も冗談半分で「私のせいにしないでよ」と言い返していましたが、私が捨てたことになっていたのはちょっと……という感じでしたね。引っ越しの片づけを娘まかせにする両親に不満が爆発——ご両親が動けない分、Mさんの負担が大きかったんですね。そうなんです。両親は病気もあり、動くのはほぼ私だけ。両親は常に感謝はしてくれますが、早く片づけたい私とゆっくりでもいいという両親とではペースが合わないので、なかなか片づけが進みませんでした。だから次第に、片づかないことにイライラが募っていったんです。ちょうど子どもの受験のフォローが必要な時期と重なったこともあり、忙しい合間をぬって引っ越し荷物の片づけをしていました。先が見えなくて「この状況がいつまで続くんだろう」という不安に押しつぶされそうでした。どうして私だけがこんなに大変なんだろう?って。ある日、私が片づけ作業している間にテレビを観ている母を見て、これまでの不満が爆発してしまいました。自分のお客様だったら絶対に言わないような暴言を吐いてしまったんです。引っ越しが終わってからが、本当の山場でしたね。——親子だとついケンカごしになってしまいますよね。それでも引っ越しの荷物の片づけを進めるために、ご両親とどう向き合っていきましたか?親はほとんど動けないので、私がやらなかったら片づかないですから。自宅に戻ったときに家族に愚痴をこぼすことで、どうにか気持ちに折り合いをつけて頑張っていました。でも、引っ越しの段ボールが減っていき、新居が少しずつ整ってきた頃には、不思議と私の気持ちも落ち着いてきたんです。これまでのイライラの正体は、両親に対してではなく「モノの多さ」に対してだったことに気づきました。住み替えはゴールではなく、新しい暮らしの始まり150平米から70平米への引っ越しは、モノを減らす作業が想像以上に大変です。実は私自身も、100平米の一戸建てから80平米のマンションに引っ越した経験があります。Mさんのご両親ほどの規模ではありませんが、なかなかモノを減らせず、ずっと新居が雑然とした状態でした。Mさんの場合は、自分自身ではなく両親の引っ越しで、思い通りに片づけが進められたわけではありません。住み替えに伴う親子の片づけは我慢の連続だったと思います。それでも時間をかけて空間を整えていくにつれて、お互いに気持ちも落ち着いていった。まさに「モノが整うと心も整う」を実感したというMさんの言葉が印象的でした。第26回は、引き続きMさんのご両親の住み替えの話です。住み替え後に見えてきた親の変化についてお伝えします。