父が言った、住み替え後の「最高だよ」という言葉——住み替え後の片づけが一段落して、ご両親の暮らしはどのように変わりましたか?戸建てで暮らしていた頃は大変だった階段の上り下りがなくなり、ワンフロアで生活できる快適さを実感しているようです。「お風呂に安心して入れる」「雨戸がなくなって、起きたらすぐに朝日を浴びられる生活になった」と、とても喜んでいます。安全が確保されて「もう怖くない」とも言ってくれました。やはりバリアフリーの効果は高いんですね。私自身も、両親が戸建てに住んでいた頃に比べて心配が減りました。——Mさんにとっても前向きな変化があったんですね。そうですね。それに、ある日父が「まだ慣れないこともあるけれど、最高だよ」と言ってくれたんです。引っ越しから新居の片づけまで大変なことも多かったですが、その言葉が本当にうれしかったです。そもそも住み替えを決めたきっかけは、私が両親に送った物件情報でしたが、父の心のなかにはずっと、母が苦労をしてきたぶん、余生を楽しく過ごしてほしいという思いがあったみたいなんです。二世帯住宅で、義両親と暮らしてきた母にはいろいろと大変なこともありました。母にとっては、自分が住む家なのに“自分の家”だという実感が湧いてこなかったんだと思います。父は、そんな母の気持ちを知りながらもなかなか動けませんでした。そして、父自身にも自分の家というよりは両親の家という感覚があったんでしょうね。それが住み替えという形でようやく「自分たちの家」が実現したんです。だから、両親も心から喜んでいます。ラクになった生活動線と人との付き合い——ご両親ともに、住み替えたことに後悔はなさそうですね。ほかに暮らしやすさを実感していることはありますか?駅から近くなったので、生活が便利になったと話しています。病院通いと買い物がラクになったのが一番のメリットですね。私も同じ駅になったことで両親のところに通いやすくなりました。それに、動けない、動けないと言っていた母が、引越し後にモノが片づいていくにつれて少しずつ元気になってきたんです。住み替えでモノも気持ちもごちゃごちゃしていたから弱ってしまっていたのかもしれません。——引っ越し前までご近所だった方々との関係に、変化はありましたか?長年住んでいた場所だけに、近所付き合いをしていた方はかなりいました。でも、距離を置けてかえってよかったと母は話しています。仲良くしていた方とは、新居に招待したりしてお付き合いは続いていますし。むしろお付き合いを厳選できて、気がラクになったんじゃないでしょうか。母は「そろそろ静かに暮らしたい」とよく言っていたので、住み替えがそういった人間関係を変えるのに、いい転機になったと思います。引っ越し先でも、杖をついて歩いていると声をかけてくださる方がいて、良い人たちに恵まれたとも言っていますよ。——実家の片づけが落ち着いてよかったですね。今後、実家のことでやっていこうと思っていることはありますか?モノの片づけは一区切りついたので、次は情報の整理も進めていきたいですね。保険や資産の管理、エンディングノートなど。両親が元気なうちにやっておいたほうがいいことは、まだまだあります。実家の片づけは、モノを減らすだけで終わるわけではありません。Mさんにとっては、ご両親の住み替えをきっかけに、親の暮らしとこれからを考える時間にもなったのではないでしょうか。Mさんのご両親は、住み替えによって今のライフスタイルに合ったコンパクトな暮らしとなりました。お父様の「最高だよ」という言葉は、一緒に実家を片づけたMさんにとっても最高にうれしい言葉だったと思います。そう考えると、高齢者世代の一戸建てからマンションへの住み替えは、生活満足度をアップさせるためには有効な手段なのかもしれませんね。第27回は、地方暮らしの両親の実家じまいをされた方の事例をお伝えします。