日常の何気ない親のひと言が、後で手がかりになった——「実家のこと。」の読者の中には、親がまだ元気だからこそ“親の老い”を受け止められないという人も少なくありません。トメさんはどのように親の老いを受け入れましたか。当たり前ですけど、生まれてからずっと「親に面倒を見てもらう側」だったんですよね。それが「見る側」に変わった瞬間がありました。それは「ここは私が払うよ」って自然に言えたとき。それまでは親が「お金を出すから」って言っていたのが、ある時期から私が「ここは私が払うね」と言うようになったんです。そこから銀行のカードを預けてもらったり、お金の管理を任せてもらったりと、少しずつ親子の関係が変わっていった気がします。%3Csmall%3E%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA1%E5%86%8A%E7%9B%AE%E3%80%8E%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%81%A7%E8%A7%A3%E6%B1%BA%E3%80%80%E8%A6%AA%E3%81%AE%E4%BB%8B%E8%AD%B7%E3%81%A8%E3%81%8A%E9%87%91%E3%81%8C%E4%B8%8D%E5%AE%89%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%8F%E3%82%88%E3%82%8A%3C%2Fsmall%3E——そうやって関係が変化してくると、介護の話とか、例えば亡くなった後の話などもしやすくなりましたか。いや、最初は何でも言いづらかったですね……。でも、慣れなんです。慣れると、老人ホームのこと、葬儀のこと、荷物の整理……何でもしゃべれるようになる。大変なのは、最初の一歩だけなんですよ。あと、膝を突き合わせて「さあ話しましょう」っていうのはやっぱり難しいです。お互い身構えちゃいますからね。——では、トメさんはどうやって親御さんの希望を聞いていったのですか。日頃の会話からくみ取っていったと思います。母がテレビでお葬式のシーンが映ったとき、「私はこんな豪華にやらなくていいから、家族葬にしてね」ってボソッと言ったり、ホームを決めるときも「ホテルみたいなところは絶対嫌」って言ったりしていたんです。そういう日常会話のポロッとした一言が、後ですごく手がかりになりました。子ども側として一番後悔が残るのは、「これは本当に親が望んでいたことだったのかな」ということ。認知機能が下がったり、亡くなってしまった後では、もう確認しようがない。だから、まだ元気で判断力があるうちに本人の希望をくみ取っておくことは、すごく大事だと思います。だから私も自分の子どもたちに「お葬式はこうしてね」とか「遺影はこの写真を使ってね」とか、結構カジュアルに伝えるようにしていますね。子どもには大体「何かに書いといてよ」って言われますけど(笑)。介護に対する不安の正体は「わからないこと」——将来の介護に対する漠然とした不安を抱えている子世代も少なくありません。こうした不安にどう向き合えばいいと思いますか。不安って、結局わからないから不安なんですよね。できることを全部やった上での不安と、何もしないままの不安では、まったく違うと思うんです。本の中でも提案はたくさんしているので、まずはそこからやってみてほしい。それでも不安だったら、アンテナを張って情報をキャッチし続けるしかない。前にもお話ししましたけど、やっぱり「介護は情報戦」ですからね。%3Csmall%3E%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA1%E5%86%8A%E7%9B%AE%E3%80%8E%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%81%A7%E8%A7%A3%E6%B1%BA%E3%80%80%E8%A6%AA%E3%81%AE%E4%BB%8B%E8%AD%B7%E3%81%A8%E3%81%8A%E9%87%91%E3%81%8C%E4%B8%8D%E5%AE%89%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%8F%E3%82%88%E3%82%8A%3C%2Fsmall%3E——確かに、知らなくて分からないからこそ不安になるのかもしれないですね。あと、不安になりすぎないことも大事だと思うんです。不安を抱えてじっとしているよりも、今を楽しんだ方がいい。実はうちの両親、そこそこお金を遺して亡くなったんですよね。それだけお金があったなら、もっと元気なうちにあちこち行ったり、おいしいものを食べたりしておけばよかったんじゃないかなって思って。自分たちも100歳まで生きる前提で考えないといけないじゃないですか。だから自分の人生もちゃんと楽しんだ方がいい。今回シリーズ3冊書いてみて、親のことも大事だけど、自分自身がどうやって生きていくかということもすごく大事なんだなと考えさせられましたね。%3Csmall%3E%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA3%E5%86%8A%E7%9B%AE%E3%80%8E%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%81%A7%E8%A7%A3%E6%B1%BA%20%E8%80%81%E4%BA%BA%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%81%AF%E8%A6%AA%E4%B8%8D%E5%AD%9D%EF%BC%9F%E3%80%8F%E3%82%88%E3%82%8A%3C%2Fsmall%3E本を書いたから、いつでも両親に会える ——改めてシリーズ3冊を書き終えた今の気持ちを聞かせてください。両親は亡くなってしまったけれど、本を書いたからこそ、いつでも両親に会えるんですよね。実は自分で描いた両親のイラストが遺影代わりになっていて、その前にお線香を置いているんです。両親のことを本にできてよかったなと思っています。——そんなご両親にひと言伝えるとしたら、どんな言葉を伝えたいですか。「絵を描けるような能力で産んでくれてありがとう」と言いたいです。おかげでこうやって仕事ができているんですから。もしかしたら「稼がせてくれてありがとう」って伝えるかもしれないですね(笑)。全3回にわたるインタビューを通じて、特に印象に残ったのは「介護は情報戦」という言葉です。 でもそれは、たくさんの知識を詰め込むということではなくて、「いざというとき、ここに相談すればいい」という引き出しをひとつでも持っておくこと。そしてそれ以上に、ひとりで抱え込まず、誰かと話すことが大事なんだと改めて実感しました。自分の生活を大事にしながら、アンテナだけは張っておく。今を楽しみながら、そのときが来たら動ける準備をしておく。それが親が元気なうちにできる、一番やさしい備えなのかもしれません。そして「稼がせてくれてありがとうと両親に伝えたい」というトメさんの最後の言葉に、笑いながらも少しだけ泣きそうになりました。介護の経験を本にして、誰かの役に立つ情報として届けること。それ自体が、ご両親から受け取ったものへの、トメさんなりの恩返しなのかもしれないと思いました。トメさん、たくさんお話を聞かせていただきありがとうございました!>>#1はこちら>>#2はこちら【書籍紹介】『マンガで解決 親の介護とお金が不安です』(主婦の友社)著者:上大岡トメ 監修:黒田尚子※電子書籍あり『マンガで解決 親の認知症とお金が不安です』(主婦の友社)著者:上大岡トメ 監修:杉山孝博/黒田尚子※電子書籍あり『マンガで解決 老人ホームは親不孝?』(主婦の友社)著者:上大岡トメ 監修:畠中雅子※電子書籍あり