実家の片づけを始めたきっかけ——実家を片づけようと思ったきっかけを教えてください。2014年に母の体調が大きく崩れたことがきっかけです。ガンが見つかり、治療ではなく自宅で過ごす選択をしたため、私が週末ごとに横浜から栃木の実家に通う生活が始まりました。車ではなく、電車とバスを乗り継いでの帰省です。この時期、私は整理収納アドバイザーの資格を取得したばかり。まだ「実家の片づけ」に特化した知識は十分ではなかったのですが、これまでとは違う視点で実家の状況を見るようになりました。一人娘なので、いずれは私が実家を継がなければなりません。そのために「今」できることはなにか?と考えたんです。そうして母の看取りと並行する形で、実家の片づけを始めることにしました。最初に着手したのは、不動産や財産などの情報整理です。2人暮らしなのに、とにかくモノが多い実家――Iさんの実家はどんな家だったんですか。私は一人娘なので、子どもの頃は両親と3人暮らしでした。最初は平屋に住んでいたんですが、手狭になって2階建ての家を増築したんですね。3人暮らしにもかかわらず、土地は120坪、延床70坪の7LDKの大きな家に住むことになったんです。でも、地方では普通の広さだったので、実家に住んでいる頃は特に広すぎるとは感じていませんでした。私が独立するために上京して実家を離れてからは、両親の2人暮らしになりました。2人で生活する中で少しずつ家具や日用品が増えていったようです。贈答品や引き出物などもたくさんあります。母が捨てないので、モノはどんどん増えていく一方でした。壊れた家電や古くなった日用品も「まだ使える」「取っておく」と判断して、ほとんど手放すことがなかったんです。——そんな実家で、モノの片づけから始めなかったのは、どんな理由があったんですか。モノが多すぎて、終わりが見えなかったのと、母がモノを捨てられない性格だったからです。近くに住んでいるわけではないですし、母の意思を無視して、大量のモノを私が片づけていくことは難しいと判断しました。モノが多くても「片づいていない家」ではなかった——捨てないということは、どこに何があるかわからなくて探し物も多かったのですか?不思議なことに、母は捨てられないだけで、モノの居場所はきちんと把握できていたので、探し物をすることはなかったんです。というのも、押入れのなかに収められた紙袋一つひとつに番号が振ってあり、それぞれの中身はノートに記録していました。モノの量が多くて管理ができていない家とは明らかに違う点が、うちの実家の特徴だと思います。だからこそ「親が不便を感じていないのに、整理をしても……」という気持ちが少なからずありました。——使っていないモノがたくさんあるのに、探し物がない家はあまり聞いたことがないですね。そうかもしれないですね。ただ、うちの実家には、引き出物の食器や使いきれない保存容器、古い家電などが数多く残されていました。実家は、紙袋にまとめられたモノが床置きになっている場所もあって、いわゆる「片づいている家」とはとても言えません。けれども、母自身がどこに何があるのかがわかっていて、必要なモノはすぐに取り出せていたので、不思議と生活が成り立っている家でした。見た目が整っているかどうかは別として「生活が機能している状態」はずっと維持されていたんです。例えば、お正月に出す食器はこれ、孫が来たときにみんなに出す茶器はこれ、といったこだわりが母にはありました。だからモノが多くなってしまうんです。この経験から、モノが多いことと、暮らしが破綻していることは必ずしもイコールではないんだと学びました。一人っ子が親と向き合うことは簡単ではないIさんの実家は二世帯住宅というわけではないのに、3人暮らしで7LDKという広い家。モノが多いのに、きっちり管理されているケースは本当に稀だと思います。私自身もそうですが、一人っ子は、実家のことを自分ひとりで背負わなければなりません。お母様の病気を機に毎週実家に通いながら片づけを始めたIさんの負担は計り知れないものがあったと思います。第28回は、Iさんのインタビューの続きで、お母様の看取りと同時に始まった片づけの話をお伝えします。